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アメリカの対イラン経済制裁再発動

高橋和夫の国際政治ブログ

2018-08-08 20:38:36

アメリカの対イラン経済制裁再発動

https://ameblo.jp/t-kazuo/entry-12396541242.html

トランプ米政権がイラン制裁を再発動した。経済圧力を強め、外交路線に影響を与え、体制転覆につなげたいとの思惑がある。イランを嫌悪するキリスト教福音派を11月の中間選挙で取り込む狙いから、投票2日前までにイラン原油の輸入をやめるよう各国に要求しており、第2弾の制裁となる石油禁輸も科す方針だ。米要求を拒否できる中国のイランへの影響力が増大するだろう。


トランプ大統領は5月にイランとの核合意から離脱、オバマ前政権が停止した制裁の再発動を警告していた。イランの通貨は暴落し、通貨切り下げは輸入品価格の上昇を招いた。各地で経済状況の悪化に抗議するデモが起き、支配層は大きな危機に直面している。


米制裁は4段階に分類できる。①米企業によるイランとの取引禁止②イランと取引する企業の米市場からの排除③イランと取引する金融機関のドル決済システムからの排除④イラン原油の輸入禁止-である。今回は①②が中心となる。


③が実行されると、大半の金融機関はイランと取引できなくなる。イランとの間で大規模な資金の移転が不可能になれば、商売はできない。日欧企業のイランからの撤退が相次いでいる。


④のイラン原油に関し、欧州諸国の依存度は低い。日本でさえ総輸入量の5%程度だ。このため、米要求をのんで輸入をやめても経済は回る。金融機関がイランと取引できないので、原油代金の支払い方法もない。


日欧への輸出継続に期待できないとなると、イランは米要求を無視できる国に頼るしかない。中国である。中国は既にイラン原油の最大のお得意様だ。米制裁はイランにおける中国の影響力をさらに高める。


懸念されるのが、イランが核合意から離脱する可能性だ。イランは制裁停止と引き換えに、核兵器製造につながりかねないウラン濃縮活動を制限した。米制裁が再発動され、合意にとどまる意味は薄れる。


イランが核兵器保有の方向に走り始めたら、国際社会は二つの選択肢しかない。保有を容認するか、戦争に向かうかである。いずれにしても不愉快な選択になる。


こうした問題が想定されながら米国が核合意から離脱した背景には、イランに厳しい国民感情がある。1979年のイラン革命期にテヘランの米大使館が占拠され、館員が人質になった。事件は444日間も続き、イランへの心象は決定的に悪くなった。米政治家にとってイランをたたくことはプラスになる。


キリスト教徒右派の福音派は特にイランを嫌悪する。イスラム教シーア派を国教とする同国をイスラエルへの脅威とみなしているからだ。福音派は聖書をそのまま信じる人が多い。70年前のイスラエル建国は、聖書に記された古代王国の再生と捉えて支持している。


イスラエルのネタニヤフ首相はイラン脅威論を声高に唱えている。核合意についても、一定期間後に核開発制限の一部が終了するなど問題が多いと反対してきた。合意離脱と制裁再稼働は「大票田」の福音派とネタニヤフ氏を喜ばせる。


米国民の4分の1は福音派である。うち75%は白人で約6千万人に上る。2016年の大統領選では、その大多数がトランプ氏に投票したと推定される。同氏が各国に求めたイラン原油の輸入停止期限は11月4日。中間選挙投票日の48時間前である。偶然だろうか。


※2018年8月7日(火)に共同通信から配信されたコメントです

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