炎天下の駐車場で車内に置き去りにされた子どもが、熱中症などで命を落とすケースが後を絶たない。酷暑のこの時期、パチンコ店が見回りを強めるなど、あちこちで注意が呼びかけられている。

 千葉県八千代市のマルハン八千代緑が丘店。女性従業員が昨夏、駐車場の車の中でぐったりとした2歳ぐらいの女児を見つけた。

 気温は30度を超えているのに、エアコンは動いていない。窓をたたき、声をかけても反応はない。店内のアナウンスで車の持ち主を呼び出し、警察に通報。ガラスを割ろうとした瞬間、女児が寝返りをうった。

 発見から10分後、戻ってきた両親は「短時間じゃないですか」「こんなことで子どもは死にません」。いらだった様子だったという。

 当時店長だった片山晴久さん(38)=現・静岡店長=は「保護者との温度差を感じる。夏場の車内が危ないと思っている人が少なすぎるのでは」と話す。

 赤ちゃんの寝顔の下に、「救出の為(ため)、車の窓ガラスを割る場合があります」。全国で300店以上を展開するマルハンは昨春、こんなポスターをつくり、今年5月にネットで話題になった。「割っていいのか」「託児所を作れ」という批判の一方、「子どもの命はガラス1枚より重い」と賛意も寄せられた。

 八千代緑が丘店の見回りに今月、同行してみた。気温は32・5度。駐車場に日陰はなく、閉め切った車内はすぐ息苦しくなる。

 後部座席の窓ガラスが黒く、中が見えにくい車も多い。チャイルドシートやブランケットが見えると、子どもが隠れている可能性があって注意が必要だ。懐中電灯のほか、いざという時に窓ガラスを割るハンマーも持ち歩く。

 山崎直樹店長(45)は「従業員も体力的にきついが、かけがえのない子どもの命を守りたい一心で回っています」。

ログイン前の続き車内、1時間で50度超に

 パチンコ店の業界団体「全日本遊技事業協同組合連合会」によると、昨年度は静岡県湖西市のマルハン系列店で1歳の男児が放置されて亡くなるなど、全国で少なくとも子ども2人が死亡。各社が見回りに力を入れ、子どもを見つけ出したケースは82件、104人にのぼり、前年度(26件、34人)の約3倍に増えた。

 対策に取り組むのはパチンコ業界だけではない。

 日産自動車は2016年から「熱駐症(ねっちゅうしょう)ゼロプロジェクト」を掲げる。閉めきった車内が高温になって、グミやクレヨンが溶け出す動画を公開。真夏日には、専用のカーナビに警告表示を配信している。コンビニ大手のセブン―イレブン・ジャパンは、車内に子どもだけが取り残されている場合、保護者が見当たらなければ警察に通報しているという。

 日本自動車連盟(JAF)の調査では、回答者の4分の1以上が「子どもを車内に残して離れたことがある」と回答。理由として「すぐ戻れる状態だった」「子どもが寝てしまった」などが挙がった。

 JAFの実験では、気温35度で窓を閉めた黒色ミニバンの車内は、1時間で50度超に。白いミニバンで窓に日よけを広げても約3時間で50度に達したという。

 厚生労働省によると、03年7月~16年3月に、車内放置で少なくとも20人の子どもが熱中症脱水症状で死亡。親が保護責任者遺棄致死罪に問われる例も相次ぐ。「夏に子どもを放置するのは育児放棄に等しい。絶対にやめてほしい」と担当者は呼びかける。(山田暢史、河崎優子)