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愚劣の極み~皇軍の体質を「ブラック」と書く歴史学者の書評~

 今日(2018/06/23)の『朝日新聞』の読書欄の書評には度肝を抜かれた。差別語「ブラック」という流行語とは、言葉の使用者のかくも無残な愚劣を晒してしまうものだからおそろしいものだ。

 

 吉田裕『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』(中央新書、2017年)が売れているようで、評者=一ノ瀬俊也(日本近現代史)は見出しで「現代に通じるブラック体質」と記す。本文では──「日本人は日本人論を好むとよくいわれる。・・・中略・・・本書はそのような日本人論のひとつとして受け止められ、ゆえに多くの読者を獲得したと私はみた。そこで描かれる旧日本軍のやり方は、自らの無策を補うため兵士の生命を徹底的に軽視して死に追いやるなど、近年社会問題化しているブラック企業のそれと酷似している。このブラックさは日本人ならではの伝統、体質に由来すると思った人も多いのではないか。・・・」。

 

 日本近現代史の学者が、米国の公民権運動も「ブラック・イズ・ビューティフル(黒は美しい)」運動もマルコムXも知らずに、差別語「ブラック」を流行語だからと平然と使い、「旧日本軍のやり方は・・・ブラック企業のそれと酷似」と書いてしまうのは愚劣の極みである。そういえば早川タダノリが戦前の日本国家を称して「ブラック国家」と記していて笑えたが、この愚劣を歴史学者までやらかしてしまうのが名誉白人低国のおぞましい現実なのである。


 文化人類学者・竹沢泰子氏によると──ヨーロッパ人を白色人種と呼んだり、白い肌が美しいとする考えは、元来極めてユダヤ=キリスト教文化圏の伝統に支配された考え方だと思います。ユダヤ=キリスト教文化圏では旧約聖書にあるように白を 光、黒を闇として、善である白い色を自分たちの色に当てはめたわけです。この指摘に接して人がもし覚醒するならば、まず差別語「ブラック」など使えないはずなのだが・・・。

 

 映画『マルコムX』の日本公開から25年たち、この映画を見ていさえすれば、差別語「ブラック」などまず使えないのだが、歴史学者は映画を見ないのか?、ここに肝心な部分を映画から紹介しておく。

▼映画『マルコムX』より、受刑者ベインズと受刑者マルコムXの会話

http://blackisbeautiful2013.blog.fc2.com/blog-entry-8242.html



マルコムXが刑務所の図書室の中で、同じ受刑者のベインズと、ウェブスターズ・カレッジエイト辞典を引き、それを読みながら、会話する場面だ。以下、その場面の会話を紹介する。

◆映画『マルコムX』より――

受刑者ベインズと受刑者マルコムXの会話

★刑務所の運動場にて――

・・・

ベインズ:神は黒人だ

マルコムX:神は黒人?神は白人だぜ

ベインズ:白人がそう言ったんだろ?「お前は黒い異教徒だ」とな。「金髪で白い肌、目の青いキリストを信じろ」「黒人は呪われた人種だ」と。辞書で「黒」という言葉を?すべて白人のデタラメだ

マルコムX:デタラメ?

ベインズ:見せよう

★刑務所の図書室の中で――

ベインズ: 黒 ― 光の欠如した状態。色彩のないこと。暗黒で、「未来は暗黒」のような形容に使われる

マルコムX: 言葉に強いな

ベインズ: 汚れてて、不潔、陰気、敵意。「暗黒の日(ブラックデー)」のような形容もある。極悪とか残酷さを連想させる言葉。恥、不名誉、過失等を暗示する。脅迫(ブラックメール)、除名(ブラックボール)、不良(ブラックガード)。

マルコムX: ひどいな

ベインズ: 白を見よう。読め

マルコムX:白 ― 汚れのない雪の色。あらゆる色彩の原点。黒の反対。けがれのない状態。無垢(むく)、純粋、悪意のないことの象徴、無害、正直、公正、名誉・・・。これを書いたのは白人だな、白人だろう?

ベインズ:白人だよ

マルコムX: なぜ読む

ベインズ:裏に真実が隠されてる。逆手にとって武器にするんだよ


******

 

 マルコムXを知らないと差別語「ブラック」を使ってしまう。たかが映画でも、人を愚者から遠ざける。


 最後に、ブラックが現在の米国で黒人の最も好ましい呼称の1つであることを考慮すれば、この国の労働運動を担う名誉白人どもがブラックにあらゆる悪を含意させて大氾濫させているのは人種主義を煽る大罪でもあるのだが、権力はといえば名誉白人の労働運動を「クロ」と見なして監視するのであるから、名誉白人低国の現状は色々ラベルつけあってあって奇々怪々である。

 

 

追記:ブラックは差別語から黒人の最も好ましい呼称へ

■荒このみ『マルコムX――人権への闘い』岩波新書、2009年

頁128――
「いわゆるニグロ(so-called Negroes)」――決まり文句その1

 「アメリカの黒人」を指示する言葉は、時代とともに変化してきた。マルコムXの時代の1950年代から60年代前半に、かれらは「ニグロ」と呼ばれ、70年代の初めになるとアフロ・アメリカンに変わり、今日ではハイフン抜きのアフリカン・アメリカンが一般に普及している。この変化は何をあらわしているのか。
 だれもが「ニグロ」と呼ばれて疑問を抱かなかった時代に、マルコムXはそれを問題にした。そこにマルコムXの感覚の鋭さがある。マルコムXが活動を始めた1950年代、「ニグロ」は中立的表現であり、「ブラック」や「ニガー」が差別辞とみなされていた。「ニガー」は今でももちろん差別辞だが、かれら「アメリカの黒人」同士では自由に使いあっている。当時、「ブラック」と言われれば、子供たちの間ではつかみあいの喧嘩になったという。ところが「ブラック」のみならず「ニグロ」でさえ、決して中立的表現ではないことをマルコムXは果敢に指摘した。 

 


(注:2017年3月3日更新 改稿)早川 タダノリは2010年には、トンデモ和製英語「ブラック」を使えない(笑)

 




早川 タダノリは2010年には、トンデモ和製英語「ブラック」を使えない(笑)

(注:2017年3月3日更新 改稿)

 『神国日本のトンデモ決戦生活』の文庫本が手元にあるが、さすがにこの本にはトンデモ和製英語「ブラック」は使われはいないだろう(笑)。もちろん子細に読んで確認をとってはいない。流行語に飛びついて、その言葉=トンデモ和製英語「ブラック」を使う本人には、結論の意味は分かっているのだろうが、私にとっては意味不明な文章でしかない。

【・・・社長の命令は天皇の命令だ」と言っているようなもの、労働条件や賃金に文句を言えば非国民になってしまう仕組みなのである。「日本スゴイ」言説の究極形態は、「ブラック国家」とでも呼べるような奇怪な国家体制を作り上げたイデオロギーだったのだ。】

大日本帝国では「日本スゴイ」言説で満ちあふれていたことは事実。
「日本スゴイ」言説が大日本帝国を作り上げた?
大日本帝国では異論を排したので「日本スゴイ」言説だけが流布した?

で、奇怪なのはどっち?

○奇怪な国家体制=大日本帝国

?奇怪な国家体制=「ブラック国家」

?奇怪な国家体制<「ブラック国家」

?大日本帝国=「ブラック国家」

少なくとも現在は、搾取企業(悪徳企業、無法企業、ゴロツキ企業・・・)に労働者が会社を追い出されても非国民には絶対ならないわけで、結論文にトンデモ和製英語「ブラック」の出番など全くないように思われるが・・・。70年以上前の戦前を今の知識でトンデモ呼ばわりするのは良いことだし、今の流行語で揶揄することも構わないが、あろうことかトンデモ和製英語「ブラック」を使ってしまうと、米国の公民権運動や「ブラック・イズ・ビューティフル(黒は美しい)」運動からも50年以上たっているわけだから、未だにブラックにあらゆる悪を含意して使う愚劣のトンデモ振りもまた非難されて当然だろう。


☆「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜 単行本 – 2016/6/30
早川 タダノリ (著)
出版社: 青弓社 (2016/6/30)

★神国日本のトンデモ決戦生活 (ちくま文庫) 文庫 – 2014/2/6
早川 タダノリ (著)
出版社: 筑摩書房 (2014/2/6)

★神国日本のトンデモ決戦生活―広告チラシや雑誌は戦争にどれだけ奉仕したか 単行本 – 2010/8
早川 タダノリ (著)
出版社: 合同出版 (2010/08)

 



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