2017年8月8日更新版 トンデモ和製英語「ブラック」はなぜ使ってはいけないのか?

  以下、改めてトンデモ和製英語「ブラック」をなぜ使ってはいけないかを思いつくまま箇条書きしてみた。よってこの記事は今日(2017年8月8日)以後たびたび更新されていく。

  トンデモ和製英語「ブラック」(「ブラック企業」・「ブラック社会」・「ブラック大学」「ブラックバイト」「ブラック(注:この頃は単独で使われることも増えた)」・・・、対義語の「ホワイト企業」「ホワイト社会」・「ホワイト大学」「ホワイトバイト」・・・)をなぜ使ってはいけないのか?


1.ブラック→黒人の意味がある事ぐらい、中学生英語ぐらいで分かるだろう?


2.米国の黒人に一番好まれている呼称はブラックである(1995年調査)。

▼米国の人種・民族の自称についての国勢調査(1995年)で、黒人の場合
は、混血も含め、単純に「アフリカ系」でない者も含まれて、
 一番好まれている呼称は「ブラック(黒人)」(44.15%)だった。「アフリカ
系アメリカ人(African American)」 28.07%、「アフロ=アメリカン(Afro-
American)」12.12%


3.ブラックは「ニガー」と並んで差別語であった。「ブラック・イズ・ビューティフル(黒は美しい)」運動を経て、それが黒人の最も好ましい呼称の1つになった。


4.白人英語は黒人差別を正当化するために、ブラックにあらゆる悪を含意させた言葉を数多く作っている。


5.白人の色の価値観も、聖書の光と闇を白と黒に対応させて色の価値を序列化させた。

★竹沢泰子──ヨーロッパ人を白色人種と呼んだり、白い肌が美しいとする考えは、元来極めてユダヤ=キリスト教文化圏の伝統に支配された考え方だと思います。ユダヤ=キリスト教文化圏では旧約聖書にあるように白を光、黒を闇として、善である白い色を自分たちの色に当てはめたわけです。


6.インドの色の価値観も英国のインド支配で白人の色の価値基準に沿って変化してきた。

▼インドにおける色の価値観の変遷 ⑤
http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/39849881.html


7.日本でもトンデモ和製英語「ブラック」が氾濫して、「ブラック」の意味が悪を含意させる白人英語のブラックに近づきつつある。


8.かような過程を経て、「ホワイト企業」・「ホワイト化」なるトンデモ語まで使われ、日本人の名誉白人化が進行している。


9.一方米国では、白人至上主義者がホワイトパワーを連呼してデモ行進。白人至上主義者による黒人の虐殺も起きている。


10.労働運動がトンデモ和製英語「ブラック」を使い社会に差別と偏見を拡散しているという度しがたき愚劣がまかり通り、日本の労働運動の「井の中の蛙」状態が世界では際だっている。


11.差別語を使い、初めから国際連帯を拒否する労働運動

強欲企業独裁反対で国際連帯が急務なこの時期に、日本の労働運動内部に人種差別反対の黒人運動との分断を予め用意しているという愚劣は最悪であるということ。

 
12.「トルコ風呂」という呼称はトルコ人留学生などの抗議で違う言葉に言い換えられた。よって「ブラック企業」という呼称も黒人の抗議があれば言い換えられる可能性はある。私たちの抗議を無視する人間でも当事者からの抗議にはその種の態度はできない。


13.ネットのトンデモ卑語──「ブラック企業」(ブラック会社)・「放射脳」・「除鮮」から、なぜか「ブラック企業」だけが大流行したが採用者はブラックに黒人の意味がある事も知らなかった?あるいはまた、採用者は他2つを排除するぐらいの知性しか持ち合わせてはいなかった?


14.警察用語のクロ(犯罪容疑あり)が推理小説(警察小説)・記者・法曹界で流通していて、トンデモ和製英語「ブラック」の氾濫の素地があった。


15.トンデモモノカキ・筒井康隆の言葉狩りが悪い意味で捉えられていて、言葉の言い換えの本当の意味合いが理解されていない。

★・・・筒井康隆は、「めくら縞」は「目の不自由な人縞」というのかと茶化す
 が、どんなに彼がおかしがって笑おうと、「めくら」を「目の不自由な 人」と言いかえることで、そして、そのことを日本語を使う人が覚えることで、社会的に変化をあたえているのである。その心理におよぼされた変化は、実際に盲人と接するときに微妙に影響してくるのである。また、筒井が「目の不自由な人縞」というふうな言葉を書くこと自体、彼がほんの少しでも盲人について考える時間を持ったことになる。被差別者にとって最悪な状態とは、差別者からしかと(無視)されたり避けて通られることだから、 ちょっとでもふりむいてもらえればそれでよい。・・・(塩見鮮一郎『作家と差別語』明石書房、1993年、 頁108)

★教科書「国語Ⅰ」の新版に収録された「無人警察」を読み、てんかんの記述に、読者として疑問を覚えたのは、千葉県の公立高校の先生だった。
  差別は、いつもこうしてだれかによって発見(創造)されるのである。「無人警察」については刊行後28年たっていたことになる。28年間、差別に関してはなんのことはない小説だった。
  もう一度,確認しておこう。
  「無人警察」のてんかんについての記述は、社会的に認知されていたのだ。作者はずっと今日まで手を入れていない。作品は変化していない。
  変わったのは社会のほうだ。社会が変わったために、作品のうちに差別があると思えだした。それにイの一番気づいた読者が、千葉県の先生だったことになる。(塩見鮮一郎『作家と差別語』明石書房、1993年、 頁34)

★筒井康隆──「(略)是非ご理解戴きたいのは、てんかんを持つ人に運転をしてほしくないという小生の気持ちは、てんかん差別につながるものでは決してないということです。てんかんであった文豪ドストエフスキーは尊敬するが、彼の運転する車には乗りたくないし、運転してほしくないという、ただそれだけのことです。」
  ・・・
 この筒井氏への反論に対しては、「欠落条項」により、自動車の運転など、社会生活上必要な手段を奪われている人から、強い批判がなされています。その批判の主眼は、障害者の社会権・交通権にかかわる問題です。運転免許交付の原則は、身体障害や精神障害の有無に関係なく、その人自身が安全運転できるか否かを基準にすべきであり、「保安処分」観点から判断すべきではありません。(小林健治『差別語不快語』にんげん出版、2011年、 頁79)


16.差別語が社会の進歩(人間の進歩)によって日々発見され、差別語が日々言い換えられていること自体を多くの人が知らない。

★ 差別語をめぐる議論にあきあきし、それが不毛だと感じた人たちの口からよく聞かれる意見の一つに、ことばだけとりかえてみても、そのことばが指している現実や事態が変わるわけではないというのがある。
  それは大部分その通りだが、そうではない点もある。というのは、ことばは現実のみならず、人々の意識、精神世界の領域のできごとを描き出そうとする。このことを否定する人はまずいないであろう。この本はまさにその問題ととりくんでみたものであるが、いま身近な例として、病気を指す名のことを考えてみよう。
  病名は、単にある病気を客観的に示すだけでなく、そこには多くの偏見がくっついている。ところが病気は医学の発達によって、それとたたかい、なおす方法が次々に開発されてくる。それによって病気への認識が変わってくれば、より適切な言いかたに変える必要が生まれるだろう。
  こうしてとりかえられたことばが指す病気そのものは依然同じであっても、そこにはより客観的で偏見がなく、そして病気で苦しむ人々に絶望ではなく希望を与えるはたらきがあるとするならば、私たちはもちろん、そのようなニュアンスを持ったことばにとりかえる必要がある。
  このように考えると、ことばのたたかいは、観点――ものの見方のたたかいでもある。(田中克彦『差別語からはいる言語学入門』明石書房、2001年、頁18)


17.名誉白人・人種主義者の石原慎太郎は当然黒人差別発言をしている。
 日本・南ア友好議員連盟(1984年発足) 幹事長の彼曰く――「アメリカでは黒人を使って能率が落ちている。黒人に一人一票やって も南アの行く先が混乱するだけだ、独立してもやっていけない」


18.トンデモ和製英語「ブラック」の使用者は梶山静六並である。

  1990年、自民党の梶山静六法務大臣。資格外就労の外国人女性の摘発をめぐって、
 「たとえば、悪貨は良貨を駆逐するというが、アメリカにクロ(黒人)がはいって、シロ(白人)が追いだされているような混在地になっている」


19.人類はアフリカを出てアラビア半島南岸を通って世界に拡がった。よって人間は総て“アフリカ系”と名乗ることができる。この科学的思考ができない愚者は、白人英語に洗脳されて、ブラックにあらゆる悪を含意して解き放つ


20.ヨーロッパ人も昔は黒かった
http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/39714511.html


21.マルコムXは「ニグロ」使用時にも“いわゆる”を付けていた。

▼ [CML 037997] マルコムX──私が言う「ブラック」の意味は非白人、つまり黒、褐色、黄色などの有色人種の総称である。
http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/39807924.html

 
★ だれもが「ニグロ」と呼ばれて疑問を抱かなかった時代に、マルコムXはそれを問題にした。そこにマルコムXの感覚の鋭さがある。マルコムXが活動を始めた1950年代、「ニグロ」は中立的表現であり、「ブラック」や「ニガー」が差別辞とみなされていた。「ニガー」は今でももちろん差別辞だが、かれら「アメリカの黒人」同士では自由に使いあっている。当時、「ブラック」と言わ れれば、子供たちの間ではつかみあいの喧嘩になったという。ところが「ブラック」のみならず「ニグロ」でさえ、決して中立的表現ではないことをマルコムXは果敢に指摘した。(荒このみ『マルコムX――人権への闘い』岩波新書、2009年、頁128)


★ マルコムX――奴隷制度がしかれていたあいだ、考えてもみなさい、強姦者である白人の奴隷主の手を逃れえたわれわれ黒人の祖母、われわれの曾祖母、さらにわれわれの曾々祖母は、まずいなかったのです。


22.大石俊一『英語帝国主義に抗する理念 「思想」論としての「英語」論』ガンディーの言葉「これは絶対的に愚かしいことではないのか。奴隷状態の印ではないのか。・・・・・インド人を奴隷化したのは、私たち、英語を話すインド人なのである。インド国家の呪詛はイギリス人ではなく私たちに責任がある」


23.メディア(ミーディア)の度しがたき支離滅裂──

本多勝一の「黒は美しい」と今時の『週刊金曜日』・・・③
http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/38670351.html


24.色に価値を持ち込む愚劣──

 CML 038129] 「白」=善、勝利、 真実、「黒」=悪、敗北、虚構、「黄色」=臆病、 反逆者 - ヘナチョコ革命 - Yahoo!ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/39809533.html

 

25.米国では民衆を分断するために奴隷制度が案出された

★17世紀までには、植民地は紛争状態に入り、社会というアリーナのなかに、我々はある重要な変化の始まりを見ることになる。多数の貧民と、インディアンの所有地以外のすべての土地をわがものとしていた少数の貪欲な古い入植者とのあいだに、大きな階級紛争が起こっていた。もっとも有名なものは1676年のナサニエル・ベーコンをリーダーとする反乱で、その反乱では植民地人口の約4万のうち8千人もの白人、黒人、ムラート(引用者注:白人と黒人の「混血児」)、インディアンら、若く貧しく土地を持たない男たちが団結し、エリート支配層に対して立ち上がった。ここでは詳細に立ち入ることはできないが、この反乱の結果、貧民を分断し、さらなる反乱を防止するための戦略が、植民地の指導者たちによって案出されることになった。(『人種概念の普遍性を問う 西洋的パラダイムを超えて』竹沢泰子・編、 人文書院、ペ頁165)


26.名誉白人へのあこがれ?

 英語帝国主義に従属する日本でトンデモ和製英語「ブラック」「ホワイト」を駆使して名誉白人化を目指す。以下反面教師の林田力──

 ★林田力──これに対してブラック企業やブラック士業はブラックなやり口で金儲けをすることへの嫌悪感が込められている。ブラック企業が経済的成功を収めているとしても、そのやり口自体が唾棄するものであることを示している。ブラック企業やブラック士業によって日本語の黒に今まで以上に強い否定的意味を与えることができた。「Black is sneaky.」である。だからこそブラックバイトやブラック稼業などの新たな派生語も生まれてくる。ブラック企業やブラック士業は日本語を豊かにする言葉であり、この表現を大切にしたい。


27. 日本の音楽界では『ホワイトラブ』なる歌も流行っていた。この英語無知の愚劣をもし知っていれば、「ブラック企業」なる言葉も生まれない。 英語が多少分かれば「搾取企業」からスウェットショップを思いつくが、使えそうもない判断すれば中国語の「血汗工場」を思いつく。いずれの場合も「ブラック企業」なる言葉は生まれない。


28.トンデモ和製英語「ブラック」使用者の興味深い使い分け

☆河添 誠‏@kawazoemakoto 2013年12月1日
https://twitter.com/kawazoemakoto/status/407366145562640385

カナダのトロントで開かれたレストラン労働者の権利向上の国際会議で、日本の労働状況を話した時に「ブラック企業大賞」を私が紹介。移民の活動家から「いい運動だけど、ブラックじゃなくてホワイトだよね」と皮肉をこめて指摘された。アメリカなどでは、「ブラック」を否定的に使うことは許されない。

▼トンデモ和製英語「ブラック」はあらゆる意味で日本限定でしか使えない
http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/38525788.html

 トンデモ和製英語「ブラック」を多用する弁護士の存在を不思議に思っていたのだが、以下の引用でその疑問も氷解した。

★伊東秀子『恵庭OL殺人事件 こうして「犯人」は作られた』日本評論社、2012年

 頁83――

・・・
 道警本部の捜査一課長が「証拠は山ほどある。どの証拠もクロの方向を向いている。彼女はまっ黒けのけだ」と言い放った顔が思い出された。・・・

****

  伊東秀子は弁護士で、警察用語の「クロ」という言葉をよく聞く立場である。よって弁護士たちは、「クロ」→「ブラック」にすんなりなじむ可能性がある。NPJもそうだし、「ブラック企業」を定義した弁護士たちも多分すんなり「ブラック」を受け容れたのだろう。またそのほかでは、刑事小説を書く物書きは、普段使う言葉だろうから、「ブラック」に違和感はないかもしれない。もちろんクロと「ブラック」は違う言葉だが・・・。

  で、弁護士たちは米国史には疎いのだろうか?公民権運動も知らないのだろうか?言葉の諸々に無頓着なのだろうか?言葉の使用範囲だけでみてみても、「ブラック企業」などいう言葉は日本企業にしか使えないから、「米国のブラック・エンタープライズは「ブラック企業」だ」などと書けば恥をかくし、「ミルトン・フリードマンの親父の工場は「ブラック工場」だった」と書くのも恥さらしとなる。この致命的欠陥に気づけば、トンデモ和製英語「ブラック」は言葉狩りすべきという結論に達するはずだが、さて弁護士たちはどうするのだろう。グローバルの時代だとメディア(ミーディア)は喧しいが、その時代にあらゆる意味で日本以外では全く使えないトンデモ和製英語「ブラック」とは、何というあほらしい存在なのだろう。

▼[CML 027219] Re: トンデモ和製英語「ブラック」はあらゆる意味で日本限定でしか使えない

http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/39388031.html

 [CML 027219] Re: トンデモ和製英語「ブラック」はあらゆる意味で日本限定でしか使えない
萩谷 良
2013年 10月 23日 (水) 16:29:18 JST
http://list.jca.apc.org/public/cml/2013-October/027162.html

そうです。こんな言葉をアフリカは言うまでもなく、欧米でも使ったら非難轟々です。タコ部屋でいいのです。私は日本でも使いたくありません。
 知り合いの米国人で、日本滞在歴の長いひとにBlack companyってどんなイメージ?と聞いたら、黒人が経営してるの? だって。日本通のひとなんだけど、安倍やハシゲが出て来るとテレビのチャンネル変えちゃうから、日本の最近の世相にややうとくなってるのかも・・・


29.トンデモ和製英語「ブラック」採用者=今野晴貴の言い訳

▼「ブラック企業」は人種差別か?
 今野晴貴 | NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
2014/9/3(水) 18:56
http://bylines.news.yahoo.co.jp/konnoharuki/20140903-00038815/?

「ブラック企業」は人種差別だという意見がネットをにぎわせている。昨年流行語大賞トップ10を受賞するなど、私はこの言葉の普及に深くかかわった経緯がある。こうした意見について、経過や事実関係を踏まえて、私なりの見解を述べたいと思う。

そもそも「ブラック企業」とは?

 「ブラック企業」という言葉は、もともとネット上のスラング(悪口)であり、2000年代後半に、ネットユーザーが会社の劣悪な労働条件を非難するために使い始めた言葉である 。しかし、当時は定義が判然とせず、なぜこの言葉が世の中に広がったのか、誰にも理解されていなかった。

 私は2006年からNPO法人POSSEを運営し、これまで数千件の若者からの労働相談に関わってきた。その経験から、この「ブラック企業」という言葉の背景には、「正社員雇用」の劣化があると直感的に理解した。当時、新卒正社員から「長時間労働で鬱病になった」とか「パワーハラスメントで退職に追い込まれる」といった事案が殺到していたからだ。

せっかく正社員になっても働き続けることができず、使い潰されて身体を壊し、キャリアを台無しにしてしまう。これは大変恐ろしいことである。だから、就職活動をする大学生の間でも「ブラック企業」という言葉が広がっていった。

なぜ「ネットスラング」だったのか

 このように、「ブラック企業」とは正社員雇用の劣化を批判する言葉である。では、なぜそれが「ブラック」というネットスラングとして現れたのだろうか。

2000年代後半当時、世間では辞めてしまう若者に対し、むしろ「人間力が低くなった」、「やる気がないから離職率が高い」などとばかり言われていた。政府も対策を取らず、研究者も深刻にとらえていなかった。文科省は「厳しさを教えろ」とばかり声高に叫んでいた。

あるいは、パワハラの労働相談の増加は「若者の捉え方が変わったからだ(NHK)」という分析がされたり、鬱病の増加は「新型うつ(仮病)」の広がりが原因であると説明されていた。

だから、当事者たちはネットに「悪口」を書くしかなかったのである。こうした経緯が、本当は「正社員雇用の変化」として説明されるべき事実が、「ブラック」というスラングで表現されてしまった理由である。そこには人種差別があったのではなく、専門家の怠慢、行政の怠慢があったのであり、「ブラック」という言葉でしかこの問題が表現されなかったのは、不幸だというべきなのかもしれない。

 私が2012年に執筆した『ブラック企業』(文春新書)は、この言葉の「発生の背景」を明らかにすることで、「ネット上の都市伝説」から、「ブラック企業」を労働問題・社会問題とした。2013年には流行語大賞トップ10を受賞した理由は、「この言葉の意味」、「社会的な背景」を明らかにしたからである。

 現実に広がった「ブラック企業」という言葉の背景を分析し、問題提起をし続けることは、今なお研究者としてすべき価値のある仕事であると思う。

 「ブラック企業」という言葉を使うべきか?

 厚労省も現在では私の定義を受け入れ、「若者の「使い捨て」が疑われる企業」と表現している。「黒人差別」であるかどうかは別として、行政が「ブラック」というスラングをそのまま使うことは明らかに不適切だ。行政用語としては「若者の「使い捨て」が疑われる企業」というのは適切である。

また、海外での受け止められ方には特に注意が必要だ。日本とは異なる文化的文脈があるからだ。確かに、米国の方が「ブラック企業」と聞けば、黒人差別を想起する可能性がある(ただし、それはあくまで米国での話で、日本での話ではない)。

 今後外国語に翻訳する場合は“dark business” と意訳するとか、 “black kigyou” とそのまま表記するのが適切であろう。私も国際学会や翻訳などの際に表記にいつも困っているが、試行錯誤しているところである。

 一方、一般の人が日本で「ブラック企業」という言葉を使うことに、それほど過剰反応する必要があるのかには、強い疑問を持つ。もちろん、他の言葉でこの問題を論じられるようになる方が望ましいだろうが、すぐには難しい。それにエネルギーを費やすよりも、この気運を逃さずに「ブラック企業」による長時間労働、過労死・過労自殺を止めることの方がよっぽど大切であると思う。

 「黒人差別だ」という批判の問題点

さらに続けよう。私は、「黒人差別だから使うな」という主張に強い違和感を覚える。

 過労死、過労自殺、長時間に苦しむ労働者に、「言葉が適切ではない」という批判をする前に、やるべきことがあるのではないか? と思うからだ。端的にいって、この批判者は「どの立場」から、「何を目的」としてこういうことを言っているのだろう?

こういう「言葉の上での批評」は、社会学や社会思想において痛烈に批判されている(それはしばしば「知識人」の傲慢さの帰結であると捉えられる)。

 例えば、「妻」という言葉がある。この言葉は、女性差別的な近代家族制度に深く組み込まれているために、社会学者や人権運動家の多くは、あえて使わない。「パートナー」とか「連れ合い」と言い換えるのが習わしだ。私自身、「妻」とか「家内」という言葉は普段使わない。

だが、こうした「言葉」に専門家がこだわるのは当然としても、一般人社会にとっての優先順位は低くて然るべきだ。非正規雇用で差別され、家庭内でDVを受ける女性にとっては、「言葉」の批評どころではない。もしみんなが「妻」を使わなくなったとしても、セクハラや女性労働者への差別がなくなるわけではない。むしろ「言葉」ばかりが争点になれば、現実の差別構造を軽視することにもつながりかねない。

だから、「言葉の批判」ばかりを繰り返す人は、本当は差別をなくすことに興味を持っていないのではないか、と学問的にも疑問が投げかけられてきたのである。

もちろんだからといって、「言葉」への批判がまったく無意味だというわけではない。現実の改善と結びつく「言葉の批判」はむしろ極めて有意義である。

だから、「言葉」への批判が現実の社会批判、社会を改善する取り組みに接合する方法をこそ、考えるべきなのだ。そして、これは意外と難しい作業なのである。 


30.黄色は危険な色か?

▼東洋人はいかに黄色人種にされたか?
https://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/40931090.html


31.クレオパトラの肌は黒かった!?

▼『ブラック・アテナ』 ~歴史的パラダイムのコペルニクス的転換を提起~
https://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/40944291.html


32.ギリシャ文明の色を変える

▼白色への捏造
 https://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/40930235.html


33.黒人の肌は濃い褐色?

▼これぞ黒人の中の黒人! ハンパなく黒い漆黒の黒人モデル「メラニンの女王」が超話題
https://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/40944275.html

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