作家と差別語


作家と差別語

2014/9/5(金) 午前 11:45

http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/39239242.html


 筒井康隆問題を考える時の必読書の一つが塩見鮮一郎の『作家と差別語』(明石書房、1993年)である。あいにく私の記事でも引用は少ないが、一カ所だけ引用があった。

 「差別者が被差別者を見えないことや無視することに関して、塩見鮮一郎は言葉の言い換えに絡めて次のように書く――」に続けて――


▼塩見鮮一郎『作家と差別語』明石書房、1993年

頁108――

・・・筒井康隆は、「めくら縞」は「目の不自由な人縞」というのかと茶化すが、どんなに彼がおかしがって笑おうと、「めくら」を「目の不自由な人」と言いかえることで、そして、そのことを日本語を使う人が覚えることで、社会的に変化をあたえているのである。その心理におよぼされた変化は、実際に盲人と接するときに微妙に影響してくるのである。また、筒井が「目の不自由な人縞」というふうな言葉を書くこと自体、彼がほんの少しでも盲人について考える時間を持ったことになる。被差別者にとって最悪な状態とは、差別者からしかと(無視)されたり避けて通られることだから、ちょっとでもふりむいてもらえればそれでよい。・・・

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 ちょっと引用を続ける――

▼塩見鮮一郎『作家と差別語』明石書房、1993年
頁109――
 もちろん、盲人の言いかえに、「目の不自由な人」という表現がよかったかどうかは、また別の問題として残る。片端を言いかえた「身体障害者」も同じことで、もっとうまく表現できないのか、ということは指摘できる。このところの論調を見ていると、「目の不自由な人」も「身体障害者」も、よいいいまわしではないという意見が多い。そういう気分が社会に強まると、つぎの言いかえが準備されてこよう。

        ※

 ただ、筒井康隆をはじめ論者の半数以上が、「目の不自由な人」といういい方に眉をしかめたうえで、その結論は、新しい言いかえではなく、もとのものにもどそうというものである。そのような論者は、近代社会における語の言いかえがなになのかをまったくわかっていないのだから、ほっておくしかない。


頁117――

 筒井はまず、日本てんかん協会などの「抗議する人たちの弱い立場がわからないわけではない」といい、問題はジャーナリズムの自主規制のほうにある。自分の体験でも、「10年間に、7、8件」あった抗議が最近なくなったのは、「出版社や新聞が事前にチェックして」いるためだ。
 ただ、マスコミがそのような用語規制を行いだした理由として。「もっと過激な糾弾活動を行う団体であった場合、相手に反論を許さず、あやまる以外のことをまったく認めないという一種のファシズム的行動に出ることが非常に多く」、そのトラブルを避けるためだったとした。
 わたしはここを聞いていて、すぐに部落解放同盟が女性週刊誌などの差別記事へ抗議したことを想起した。(引用者注:この注釈が頁128――)そして、筒井の言表は、配慮に欠けていると思った。糾弾行動が、筒井のいうようなイメージとして、市民社会に広まり根づいてしまったことこそ、ファシズムという言葉を使うなら、「一種のファシズム」ではないか。
 抗議と糾弾を受けたメディアが、どれほど乱暴なものを掲載したのか、そして、その内容が、まるで発言手段を持たない人をどれほど打ちのめしたかを、まず語らなければならないのではないか。


頁128――
 のちに「SAPIO」(1993年11月10日号、10月28日発売)のインタビューで、「今度のことで怒っているのは実は世の中に対してでは!?」と問われ、筒井康隆は、部落解放同盟の名をあげている。「いえ、世の中にではないです。ジャーナリズムの自主規制に対してです。まだ抗議されてもいないうちから自主規制するというのがいけないのです。だから抗議してくるそういう団体、身体障害、部落解放同盟、そういうところに対しても怒っている」


******

 筒井康隆問題の本質は、彼のてんかんという病の無知である。よって私は折に触れててんかんについても書いていくが、まず知っておいてもらいたいことは、てんかんは誰でも起こりうるありふれた病気であるという事実だ。有病率は約0.5~1%。よって100人いれば約1人がてんかんに罹患しいることになる。また累積発病率は75歳までで約3%。
 「他人の痛みは我慢できる」から、人は当事者にならなければ、人は世間並の無知に安住しているわけだ。よって筒井康隆が無知を晒した小説『無人警察』を書いても、それが教科書にまで載るというトンデモ事態も起きてしまう。

 筒井康隆の本は数冊持っている。原田知世の映画『時をかける少女』の原作も彼なので、まあやむを得ず読んでいたわけだ。よって周りで彼が「前衛」と騒がれていた時代には私にはその意味が不明であって、前衛とは井上光晴ではないかと思っていたものだ。最もその井上の小説も今ではほとんど忘れてしまっている。

 筒井康隆が皇居に勲章をもらいにいった話を『噂の真相』で読んだ記憶もあるが、あいにく『噂の真相』の在庫を古本で処分してしまい、その駄文は紹介できない。というわけで、何かの拍子で文書を削除してしまうのを防ぐ意味でも、ここに筒井康隆問題の関連資料を残しておく。
  
 彼の発言――「てんかんであった文豪ドストエフスキーは尊敬するが、彼の運転する車には乗りたくないし、運転してほしくないという、ただそれだけのことです。」は有名だ。彼のてんかんという病気の無知はさておき、ここでは移動の自由・権利という観点から彼の発言を考えてみる。
 
 公共交通機関の乏しい地方の場合には、病気、及び治療薬と車の運転の関連では、患者が病院に通うために車を運転して行く場合には、病気以前の通常の場合より幾分交通事故の危険は高まる。これをもってどうするのかという問題は常にある。このような事例が交通権にふくまれるのかどうか分からないが、この件で神経内科の医者と会話したことがある。彼が言うにはカナダでは以前にその種の問題が起きたが、車を運転する権利をその程度の理由で取り上げたら患者の生活自体がなり立たなくなるから、大目に見られているというような話だったと思う。もちろんカナダは国土面積も広く、都市部を除けば公共交通機関はそれほど発達していない(旅客の輸送機関分担率はカナダでは自動車92.7%(2009年)、日本では自動車59.9%(2005年))。

 日本ではてんかん患者の交通事故を契機に道交法改正などの厳罰化がなされたが、厳罰化で却って重大事故の可能性を高めると警告する医師がいる――「男性運転手は適切な治療を受けることなく病状が悪化し、大惨事を起こした。罰則や医師による通報制度ができれば、医師にも発作があることを隠す患者が確実に増えるだろう。免許取り消しによる失職や生活の破綻の方が、デメリットが大きいと考えるからだ」。

 厳罰化を含め、筒井康隆がばらまいたような病気への差別・偏見は却って患者を重大な交通事故へ誘うわけだ。だって社会に偏見・差別があるから病状を隠すわけだから・・・。
 誰でもてんかんになる確率はある。だが、なってみないと患者の痛みなど分からないという人は一定数存在し、被害者の振りかざす厳罰化に付和雷同し問題の本質を見間違う。想像力は誰にでもあるものだし、周りを見渡せば患者の姿だって見いだせるはずだ。しかし周りを見ようとしない人間には患者は見えない。この日本のずいぶん殺伐した世相には何かが決定的に足りない。何かとは何なのだろう?正しい医学知識か、優しさか、想像力なのか、それとも哀しむ能力なのか?
 

▼カナダの運輸事情
(2011年9月)
http://www.mlit.go.jp/common/000166909.pdf

▼旅客輸送の輸送機関分担率
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/6395.html

▼てんかん患者の事故防止 厳罰化は逆効果?
(2013年5月30日)
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130531164218682

道交法改正と新法設置案 「病状隠す人増える」懸念

 登校中の小学生の列にクレーン車が突っ込んだ栃木県鹿沼市の事故現場。運転手のてんかん発作が事故を招いた=2011年4月 てんかん患者が運転免許の取得や更新時に病状を隠したり、死傷事故を起こしたりした場合に新たな罰則を科す法案が今国会に提出されている。てんかん発作事故の被害者遺族らが厳罰化を強く望んでいることに応えた措置だ。しかし、「逆に患者が病状や運転状況を隠すようになる」と、その効果を疑問視する専門家もいる。飲酒運転対策をはじめ、重罰化一辺倒の交通事故防止策に死角はないのか。(佐藤圭)

 「てんかん患者による事故をなくしたいという気持ちは遺族と全く同じだ。だが、罰則を設けても、実際には逆効果となる可能性が高い」

 国立精神・神経医療研究センター病院(東京都小平市)の大槻泰介・てんかんセンター長は、こう警鐘を鳴らす。

 提出法案は道路交通法の改正案と、発作などを伴う病気の影響による死傷事故に罰則を新設し、従来の危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪を統廃合して「自動車運転致死傷処罰法」に一本化する新法設置案。

 罰則化のきっかけは栃木県鹿沼市で2011年4月、クレーン車の男性運転手がてんかん発作で意識を失い、小学生6人をはねて死亡させた事故だった。同年12月の宇都宮地裁判決で、運転手は自動車運転過失致死罪の上限の懲役7年を言い渡された(確定)。

 遺族の会は昨年4月と8月、厳罰化や免許制度改正を求める請願書と約20万人分の署名を法相らに提出。政府は今年3月に道交法改正案、4月に死傷事故の新法案をそれぞれ閣議決定し、国会に提出した。

 現行の道交法では、てんかんや統合失調症などの患者は免許取得や更新の際に申告が必要だ。てんかん患者の場合、発作が過去2年間起きていないなどの条件を満たせば、取得が認められる。

 改正案では、病状の虚偽申告に1年以下の懲役または30万円以下の罰金を科す罰則を設け、医師による任意の通報制度も盛り込む。

 さらに、死傷事故の新法案では、てんかんなど特定の病気の影響を初めて刑罰の対象とする。死亡事故で15年以下、負傷事故で12年以下の懲役だ。

 現行の危険運転致死傷罪は最高刑を懲役20年としているが、悪質な事故でも飲酒などに限定され、立証のハードルも高いため、上限が懲役7年の自動車運転過失致死傷罪が適用されるケースが多い。このため、遺族らから「被害者の命はそんなに軽いのか」と不満の声が上がっていた。

 しかし、大槻医師は「鹿沼の事故こそが、厳罰化によって生まれる事故の先取り的なケースではないか」と指摘する。

 男性運転手は発作による物損や負傷事故を繰り返していたが、「いねむり」と偽っていた。医師にも、発作や運転している事実を隠していた。警察に病気が発覚することを恐れたためだ。

 「男性運転手は適切な治療を受けることなく病状が悪化し、大惨事を起こした。罰則や医師による通報制度ができれば、医師にも発作があることを隠す患者が確実に増えるだろう。免許取り消しによる失職や生活の破綻の方が、デメリットが大きいと考えるからだ」

患者団体 差別助長に警戒感 「生活支援の仕組み不可欠」

 交通裁判に詳しい高山俊吉弁護士も「罰則や医師の通報制度が設けられれば、てんかん患者が社会から隔絶される」と、懸念を深める。

 11年の交通事故約70万件のうち、てんかん発作によるものは73件。高山弁護士は「てんかん事故の希少性は明らかだ。てんかんの問題が交通不安の大きな比重を占めているかのような雰囲気がつくられている。議論が拙速過ぎる」と疑問を投げかける。

 高山弁護士によれば、交通事故対策の世界では「重罰化の嵐が吹き荒れている」という。

 その端緒になったのが1999年、東名高速道路で飲酒運転のトラックが乗用車に追突し、女児2人が死亡した事故だった。上限が懲役15年の危険運転致死傷罪が01年の刑法改正で創設され、05年には懲役20年に引き上げられた。

 道交法では07年の改正で、飲酒運転とひき逃げの罰則の上限を2倍に強化したほか、運転者と一緒に酒を飲んだ同乗者や運転者に酒を提供した人を直接罰する規定も新たに設けられた。

 こうした一連の重罰化の効果はあったのか。高山弁護士は「飲酒運転への強烈な処罰は、ひき逃げの増加を生んだ。重く処罰されるのであれば、完全に逃げ切ろうという心理が働くわけだ。際限のない重罰化は、極論すれば死刑に行き着く。まともな刑事政策とは言えない」と考える。

 過去の重罰化も、今回のてんかん罰則化も後押ししたのは被害者遺族たちだ。ただ、高山弁護士は「遺族の弁護も数多く手掛けてきたが、重罰化以外の方策を模索する人も少なくない」と指摘する。「てんかん罰則化についても、子どもを失った鹿沼事故の遺族の気持ちは痛いほど分かる。しかしながら、てんかん事故の被害者の間にはもっと多様な意見があるのではないか」

 てんかん患者団体や障害者団体は、今回の罰則新設などの法案が「病気や障害のある人への差別を助長しかねない」と警戒感を募らせる。

 もともと道交法では、てんかん患者らには免許を与えないことになっていた。障害や病気を理由に、免許や資格の取得などを禁止・制限する「欠格条項」の見直しの動きが強まる中、ようやく02年、症状によって取得の可否を判断する「相対的欠格事由」に改善された経緯がある。

 障害者インターナショナル(DPI)日本会議の尾上浩二事務局長は「てんかんなどの病名を特定した規制は欠格条項の復活を思わせる」と、困惑の表情を浮かべる。

 前出の大槻医師は「今回の道交法改正を事故防止につなげるには、患者が病状を正確に申告すれば速やかに免許は停止され、一方で生活が保護される仕組みが不可欠だ。運転する必要のない部署に配置転換した企業に補助金を出したり、自治体が患者への配車サービスをするなど知恵を絞ってほしい」と訴える。

 高山弁護士は「ハード面からも事故防止を図るべきだ」と提案する。


アルコールを検知するとエンジンがかからなくなる装置。トヨタ自動車と日野自動車が開発した=東京都内で 「てんかん発作の予兆を感知すると、車を動かなくする装置をつくることは十分可能なはずだ。実際、自動車メーカーが酒気帯び感知車両の開発に力を注いだ時期もあったが、警察庁の消極的な姿勢が原因で立ち消えになったようだ。警察は重罰化に凝り固まっているのではないか」

 てんかん 脳の神経細胞が過剰に活動して発作を起こす病気。短時間ぼんやりするだけの軽い発作から意識を失うケースまで症状はさまざま。日本てんかん協会によると、患者数は全国に推定約100万人。早期診断・早期治療によって、7割以上の人が発作のない生活を送ることができる。


http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/39239242.html
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