些細なことと本質的なことと、そして整合性について

 CMLLで前田朗さんといくつかのやりとりがあったが、そこで彼が唐突に出してきた話題が、今野晴貴『ブラック企業――日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)の紹介だった。トンデモ和製英語「ブラック」の“言葉狩り”をやっている私にその話をだせば、当然私は反応する。その経過はCMLを見てもらえばいいが、以下の投稿文は私にはその意味がよくわからず対応に苦慮した。以下に記すのは書いて保存しておいた文章である。

▼[CML 027433] Re: 「ブラック企業」とたたかう
maeda at zokei.ac.jp maeda at zokei.ac.jp
2013年 11月 4日 (月) 16:43:25 JST
http://list.jca.apc.org/public/cml/2013-November/027382.html
前田 朗です。
11月4日

ご教示ありがとうございます。

些細なことですが、「ブラック企業」は、和製英語ではなく、日本語ですね。

少なくとも、今野さんの本では明らかに日本的文脈で、日本社会と日本企業を特
徴づけるための日本語として使われています。

「アメリカ合州国」も「オバマ大統領」も「アメリカ土産」もすべて日本語です
し。

****

 些細な指摘の意味がよく分かりませんが、私は、「一太郎」の「単語登録」で「と」→“トンデモ和製英語「ブラック」”としていますから混乱はないと思いますが・・・。

で、“「ブラック企業」は和製英語”とかいう表記がどこかにあったのかと思って捜したら、以下のような表記があった。

▼「無知は力」だ日本人、トンデモ和製英語「ブラック」使って、半世紀退歩だ
http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/38513129.html
・・・その黒社会を黒会社にして、黒→ブラックで、「ブラック会社」(「ブラック企業」)というトンデモ和製英語は誕生する。例えば中国語には血汗工場という搾取企業と同じ意味あいの言葉もあるが、馬鹿にはその知識はない。もちろん英語を使いたがる「幸せな奴隷」(支配言語である英語に支配されていると気づかない人間)であっても英語の「スウェットショップ」などという言葉など知るよしもない。・・・

※正確を期すため以下のように訂正する。
【・・・「ブラック会社」(「ブラック企業」)というトンデモ和製英語は誕生する。→、「ブラック会社」(「ブラック企業」)という用語でトンデモ和製英語「ブラック」は誕生した。】

 それとも「ブラック」は新たに定義付けされた日本語という意味ですか?
米国の現状への度しがたき無知が生み出した「ブラック」という言葉は典型的な和製英語です。よって新たに定義付けされた英語風の日本語として「ブラック」は氾濫している訳ですが・・・。

 和製英語「ブラック」+日本語「企業」→「ブラック企業」を日本語と言い張る場合には、和製英語も日本語の語彙だとすればそれまでですが、その場合でも、英語風の日本語の語彙「ブラック」の差別性を指摘するのは当然です。「オバマ大統領」の「オバマ」に差別性はありませんが・・・。

 「デッドボール」は和製英語ですが、トンデモ和製英語ではありません。「ブラック企業」・「ブラック大学」・「ブラック国家」・「ブラック官庁」・・・などの「ブラック」はトンデモ和製英語です。

*****

 かように指摘の意味が分からないのでは回答も要領を得ないのはやむ得ないものだ。まあ結局は些細なことだから、私の回答もどうでもよいわけだ。

 しかし問題は、本質的なことを忘れてしまっている前田朗さんのことだ。彼は『ヘイト・クライム ――憎悪犯罪が日本を壊す』という本を出しているのだ。どうみても人種差別・民族差別に真っ向から反対する立場の人だろう。その彼が、今野晴貴の『ブラック企業――日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)を好意的に紹介してしまったわけだ。私の主張を多少とも分かっていて、なおかつそれをするのだから、もう滅茶苦茶である。基準は普遍的に適用されなければならないから、日本においての民族差別・人種差別に反対するのは当然として、米国においての人種差別(黒人差別も含む)・民族差別にも反対するのも当然である。よって彼の今真っ先になすべきことは、日本で猛威を振るっているトンデモ和製英語「ブラック」の“言葉狩り”を率先してやることなのだ。ところが彼のやっていることは真逆である。だいたい今野晴貴にしたって、もし彼に声をかけられたら、“憎悪犯罪”についての本を出している人だから、和製英語「ブラック」使用について何か小言を言われると思うはずである。ところがどっこい、彼は何も言わないとしたら、彼も驚くに違いない。

 田中克彦曰く――ことばとのたたかいは物の見方とのたたかい。黒に悪を含意して日本人の意識を米国の公民権運動前まで歴史を逆転させることなど、日本人としても愚劣の極みである。日本で労働権のために戦う若者が「ブラック・イズ・ビューティフル(黒は美しい)」運動を知らないのは恥ではないかもしれない。ただし若者ではない周りの知性がその愚劣を指摘しなければ若者はずーっと馬鹿のままである。人間など知らないことの方が知っていることより遙かに多い。ただし、新たな知見を提示されても、かたくなにその愚劣を墨守するだけの人間ならば、そいつを愚か者と呼べばいいだけなのだ。「人は馬鹿に生まれない、馬鹿になるのだ!」から・・・。 

追記:以下の「デモクラシー・ナウ 動画」は必見だ。ジョン・ルイス も間違った。その苦悩の謝罪の場面も見る価値がある。御主人様の奴隷解放から100年余でやっと実質的な投票権の獲得、山本太郎の天皇への手紙がいかに愚劣か分かるだろう。もちろん国境を越えての戦う民衆の共闘も大事。労働運動がトンデモ和製英語「ブラック」など使っていては何事もできない。

▼米国公民権運動を20代の信念で支えたジョン・ルイス 投票権獲得の闘いを語る
http://democracynow.jp/video/20120710-1
 
▼[CML 027433] Re: 「ブラック企業」とたたかう
maeda at zokei.ac.jp maeda at zokei.ac.jp
2013年 11月 4日 (月) 16:43:25 JST
http://list.jca.apc.org/public/cml/2013-November/027382.html
前田 朗です。
11月4日

ご教示ありがとうございます。

些細なことですが、「ブラック企業」は、和製英語ではなく、日本語ですね。

少なくとも、今野さんの本では明らかに日本的文脈で、日本社会と日本企業を特
徴づけるための日本語として使われています。

「アメリカ合州国」も「オバマ大統領」も「アメリカ土産」もすべて日本語です
し。



▼[CML 003620] 新刊:前田 朗『ヘイト・クライム ――憎悪犯罪が日本を壊す』
maeda akira maeda at zokei.ac.jp
2010年 4月 8日 (木) 13:34:18 JST
http://list.jca.apc.org/public/cml/2010-April/003557.html

▼前田朗Blog

Sunday, November 03, 2013
「ブラック企業」とたたかう
http://maeda-akira.blogspot.ch/2013/11/blog-post_3.html
今野晴貴『ブラック企業――日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)――著者とは会ったことがある。NPO法人POSSE立ち上げの頃だ。POSSEに賛同してメッセージを送ったように記憶しているが、自分の研究・活動テーマとはやや離れているため、その後、特にかかわってこなかった。申し訳ない。改めて、見ると、著者は大学の後輩だ。確かに当時、そんなことを話していたのも覚えている。POSSE立ち上げが2006年で、著者はその頃まだ学生だった。今も大学院生だが、すでに著書が複数ある。しかも、本書を見ると、ブラック企業の被害者からの相談に基づく現実をもとにしているうえ、同時に労働法をはじめとする理論を的確に構築している。同じ若者世代のための闘いの書であると同時に、現代日本社会分析でもある。凄い。著者は嫌がるだろうが、私の自慢の後輩、ということになる(このところ、不祥事を起こした弁護士とか、同じく不祥事でビッグニュースとなった母校の総長とか、フロッピディスク改ざん事件の元大阪特捜部長とか、先輩や後輩はこんなのばかりで、情けない)。第1章でブラック企業の実態を事例をもとに明らかにし、第2章ではウェザーニューズ、大庄、ワタミ、SHOP99を実名告発し、第3章でパターンわけをし、第4章ではブラック企業が開発してきた「辞めさせる技術」を分析し、第5章で個人がいかに身を守るかを論じる。しかし、ブラック企業は社会問題であり、個人被害者だけの問題ではないとして、著者は日本企業論、日本社会論に踏み込む。第6章で「若く有益な人材の使い潰し」がいかにコストとなるかを示し、ブラック企業がそのコストを社会に転嫁していることを論じる。とても重要な指摘だ。第7章ではブラック企業を生んだ背景というか、地盤としての日本型雇用も分析し、第8章で社会的対策を提言する。「ブラック企業問題は、若者の未来を奪い、さらには少子化を引き起こす。これは日本の社会保障や税制を根幹から揺るがす問題である。同時に、ブラック企業は、消費者の安全を脅かし、社会の技術水準にも影響を与える」と言い、「これまでただ『自分を責める』ことしか知らなかった私たちの世代が、『ブラック企業』という言葉を発明し、この日本社会の現状を、変えるべきものだとはじめて表現したことにこそ、この言葉の意義はある。ブラック企業は『概念』なのではない。私たちの世代が問題意識を持ち、それを結びつけ、そして世の中を動かしていこうとする『言説』なのである」(本書おわりに)と述べる。30歳の若者が、同世代の若者と、日本社会を救うために、本書を世に問うた。今後も著者とPOSSEに注目。

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