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平塚らいてう「母性の主張について」 ~【インタビュー】超人への志向と弱者の否定、表裏の善悪~

■二兎社『私たちは何も知らない』主演・朝倉あきに聞く~「新しい平塚らいてう像を生み出せたらうれしい」

インタビュー
舞台
2019.11.18 

朝倉あき 撮影:宮川舞子    

朝倉あき 撮影:宮川舞子

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夜の闇が白々と明け始める朝に溶け込んでいくような時間帯、あの澄んだ空気と朝倉あきの淡々と抑えたトーンの語り口がとても心地よい。彼女が平日の早朝にパーソナリティを務めるJFNの番組「Memories&Discoveries」を時おり聞く。「ラジオ深夜便」とか「走れ歌謡曲」とか、あの時間帯には名番組もあるけれど、朝倉あきの声が、1日の終わりと始まりの“あわい”の豊かさを感じさせてくれる。もちろん演劇はいろいろな要素が必要なわけだが、見るものをどこか異世界に連れていってくれる魅力ある声は重要だ。朝倉あきが2016年の『書く女』以来、永井愛主宰の二兎社に出演する。平塚らいてうを中心として雑誌「青鞜」編集部を舞台にした青春群像劇『私たちは何も知らない』だ。

 「私、リスナーさんにお会いするの、初めてかもしれません。時間帯もあって聞いてくださる方が限られてしまっている番組なので。いつもありがとうございます。すごくうれしいです」

 見えないところで、拳を握って力を込めてみる。もっとも朝倉あきの声が素敵であることは、スタジオジブリの映画「かぐや姫の物語」などですでに証明済みなのだけれど。

 今風の映像などメディアを駆使した作品をのぞけば、演劇らしい演劇への出演はG2プロデュース『江戸の青空 弐 ~惚れた晴れたの八百八町~』、二兎社『書く女』に続いて3本目だ。テレビや映画では、清楚で、儚くて、どことなく幸薄そうな役が多い気がする。TBSで放映中の「グランメゾン東京」の蛯名美優も初回こそ、理想の彼女っぽさを見せて男としてはきゅんきゅんしたのだが、その後はどうも雲行きが怪しい。果たして幸せになれるのか……。

 ところが『江戸の青空 弐 ~惚れた晴れたの八百八町~』ではチャキチャキの江戸娘、『書く女』は樋口一葉の妹・くに役で、木野花演じる母・たきとともに、明るく面白く朗らかに貧乏を嘆き姉を応援する。

朝倉あき  (撮影:宮川舞子)

朝倉あき  (撮影:宮川舞子)

オファーいただいたことでやっと自信が湧いた

朝倉 永井さんから天然だってよく言われるんですよ。『書く女』のときも本当にあなたは天然よねってしみじみと……

――映像で見ているとものすごくしっかりした方かなと思ったんですけど、

朝倉 そうですよね!

――いや、劇団の制作さんによれば、永井さんは決してそうは思っていないらしいですよ。むしろ、朝倉さんの面白いところを生かしたいそうです。

朝倉 いやいや、もう永井さんにはすべて見抜かれてしまっているんでしょうけど、私は自分では天然ではないと思っているんです、、、たしかに映像は役のイメージに合わせた演技の切り取られ方をすることが多いんですけど……。『書く女』はオーディションを経て出演させていただくことになりましたが、その後で永井さんからはオーディションのときとイメージが違うとよく言われましたねえ(笑)。私が永井さんがすごいと思うのは、私自分でさえ気づいてないところを見抜いて、それに賭けようとしてくださるところ。そこが永井さんのかっこ良さ。今回も内心はビクビクなんですけど、全面的に信頼しています。ということは、私ってやっぱり面白いのかなあ(笑)。

二兎社『書く女』朝倉あき(右)と黒木華

二兎社『書く女』朝倉あき(右)と黒木華

二兎社『書く女』朝倉あき(左)と黒木華

二兎社『書く女』朝倉あき(左)と黒木華

――二度目の永井さんの脚本・演出です。しかも主演です。きっと前回のときに、何か永井さんの心に爪痕を残せたのかもしれませんね。

朝倉 まったくないです! 正直あのときはとても落ち込みました。それこそ憧れの黒木華さん(樋口一葉役)とご一緒できるのがうれしくて飛び込んだものの、自分はこんなにできないんだって思い知らされました。オーディションでも何か残して来れるだろうと頑張ったんですけど、稽古や本番のときにはいったい自分は何を以てしてこの場にいられるんだろうとずっと思い悩み、必死になって駆け抜けた感じでした。終わった後は本当に、すべてが足りなかったんだなと痛感しました。だから、いつか自分が成長したときに永井さんにまた声をかけてもらえるようになれればいいなあと今までやってきたんです。ですから去年、出演のオファーをいただいたときは信じられないという思いがありましたけど、お声がけいただいたことで十分自身がつきました。絶対大丈夫だと思っています。やり遂げます。

朝倉あき  (撮影:宮川舞子)

朝倉あき  (撮影:宮川舞子)

 二兎社の新作『私たちは何も知らない』のあらすじはこうだ。

 平塚らいてう(本名は平塚明=ハル)を中心とする「新しい女たち」の手で編集・執筆され、女性の覚醒を目指した雑誌「青鞜」は、創刊当初は世の中から歓迎され、らいてうは「スター」のような存在となる。しかし、彼女たちが家父長制的な家制度に反抗し、男性と対等の権利を主張するようになると、逆風やバッシングが激しくなっていく。やがて編集部内部でもさまざまな軋轢が起こり──

 「青鞜」は平塚らいてうが首唱し、保持研子、中野初子、木内錠子、物集和子の5人を発起人とした文学集団青鞜社の機関誌であり、月刊の女性文芸誌だった。与謝野晶子、長谷川時雨らが後援し、後に野上弥生子、岡本かの子、伊藤野枝らも参加。1911年9月~1916年2月に、途中2回の休刊がありながらも52冊が発行された。舞台では、青鞜の創刊から廃刊あたり、平塚らいてう25〜30歳くらいが描かれる。とはいえ、ビジュアル的には時代を踏襲するのではなく、衣裳など現代風のままだそうだ。

朝倉 らいてう役だと聞いたときは、もう勉強しなきゃって思いましたね。教科書に出てくる平塚らいてう像しか知りませんでしたから。先日、永井さんにもお会いして作品について伺ったんですけど、独自の視点で主人公のハルさんを切り取ろうとされている。私は歴史にすごく興味があるんですけど、聞いているとハルさんについて私にはないイメージがどんどん出てくるんですよ。きっと暴かれたくない何かを暴かれていくお話になるんだろうなあ。ハルにとっては見さえしなければ苦しまずに生きていけるという部分を、永井さんは愛をもって暴いちゃうんだろうなって思っています。

朝倉あき  (撮影:宮川舞子)

朝倉あき  (撮影:宮川舞子)

――「元始,女性は太陽であった」という有名な言葉がありますね。

朝倉 言っちゃいますよねー。すごいですよね、あの言葉。ハルさんの文章を読ませていただくと、すごくご自分に自信のあった方なのかなと想像できるんですけど、その一方で素顔はおとなしく、穏やかで、とても声の小さい女性だったようです。すごく不思議な方ですよね。もっともっと著書を拝読して、ハルさんであり、らいてうのしゃべり方、言葉遣いを自分の中に落とし込みたいと思っています。そして自分らしさと相まって、新しいらいてう像、ハルさん像が生まれたらいいなと。言葉をすごく大事にされていた方ですから、「ワタクシ」とかそういう言葉の選び方一つ一つにハルさんらしさがにじみ出てくるものがあるんですね。もちろんなりきることはできませんから、しっかり自分の中で咀嚼して、どんどんどんどん発していきたいです。

――時代的に言えば、男尊女卑の時代。そこを立ち上がっていく強さであり、外では見せない弱さも見せたりするのかなと思いますね

朝倉 そうですね。実は私もけっこう気が強くて、頑固なので自信あります(笑)。言葉を書くときは激しさが出てくるんですけど、でも話をするときは必ず「ワタクシは」と言う、決して勇ましいタイプではなかったらしいんですよ。つまり私が私がというタイプではなくて、ごく普通に私はこう思うということを、周りがびっくりしてしまうようなことでも、彼女にとっては自然に、淡々と主張していく。そこがかっこいいと思いますし、そうやって発信するだけの自信があったんだと思うんです。私自身がこう思うということをハルさんの想いに重ねながら、力むことなく役に近づいていければいいなって思っています。

朝倉あき  (撮影:宮川舞子)

朝倉あき  (撮影:宮川舞子)

 永井愛にはそれこそ青鞜に影響を受けた女学生たちを描いた『見よ、飛行機の高く飛べるを』、大逆事件をめぐり、政権に近い官僚としての立場と、表現の自由を重んじる文学者の立場の両方を持つ森鴎外の葛藤を描いた『鴎外の怪談』と、この時代を描いた名作がある。演劇界を見回しても、この時代はドラマティックな題材であるためか良作が多い。きっと『私たちは何も知らない』も名作の仲間入り、朝倉あきの代表作になる予感がする。というか、なってほしい。

朝倉 『書く女』をやらせていただいて、その上での永井さんの新作ですから、楽しみな気持ちが大きいです。どれだけ叱られるか、それに自分がどれだけ応えられるのか。また『書く女』もそうだったんですけど、同世代の若い俳優さんばかりですから、コラボレーションで何が生まれるのか、そしてツアーも含めて時間をかけて一緒に深めていくのが楽しみです。



 そしてどうやら、先輩たちのおかげもあって演劇の醍醐味である舞台の後のお酒、特に「日本酒」も今ではすっかり楽しみになってきたとか。「同世代の若い俳優さんばかりですから、(座長でもありますから)私から勇気を持って誘いたいと思います。いいお店がありましたら教えてください!」と朝倉あき。じゃあここはいかが?

取材・文:いまいこういち
ポートレイト撮影:宮川舞子

 

公演情報

二兎社『私たちは何も知らない』
 
■日程:2019年11月29日(金)~12月22日(日)
■会場:東京芸術劇場シアターウエスト
■作・演出:永井愛
■出演:朝倉あき 藤野涼子 大西礼芳 夏子 富山えり子 須藤蓮 枝元萌
料金(全席指定・税込):一般6,000円 / 25歳以下割引3,000円 / 高校生以下1,000円
■開演時間:金曜18:30、水・土曜13:30 / 18:30、火・木・日曜13:30、月曜休演
■問合せ:二兎社 Tel.03-3991-8872(平日 10:00~18:00)

<e+貸切公演/SPICE優良舞台観劇会>
■日時:2019年11月30日(土)18:30の回
■会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
■申込み:https://eplus.jp/sf/detail/3029640002
 
【全国ツアー】
・2019年11月24日(日) 富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
・2019年12月28日(土) 亀戸文化センター
・2020年1月4日(土) 兵庫県立芸術文化センター
・2020年1月8日(水) まつもと市民芸術館
・2020年1月10日(金) 三重県総合文化センター
・2020年1月13日(月・祝) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT
・2020年1月18日(土) 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
・2020年2月1日(土) ウインクあいち
・2020年2月8日(土)・9日(日) 能登演劇堂

■公式サイト:http://nitosha.net/nitosha43/


■【インタビュー】超人への志向と弱者の否定、表裏の善悪

社会 神奈川新聞  2019年08月26日 14:00

https://www.kanaloco.jp/article/entry-190726.html

 スポーツだけではない。受験も、就活も、身分や家柄によらない自由な競い合いを支え、自己実現に導いているのが能力主義だ。一方、能力の優劣で生殺を決めたのが、津久井やまゆり園19人殺害事件だった。能力主義の得体(えたい)が知れない。哲学者の竹内章郎さん(65)を訪ねた。(聞き手・川島 秀宜)


・・・

 「平塚らいてうや福沢諭吉を挙げれば、わたしたちが能力主義の『悪』の側面にいかに鈍感であるか、わかるはずです。平塚は女性解放運動の『善』なる印象が強いですが、『普通人としての生活をするだけの能力のないような子供を産むことは、人類に対し、大きな罪悪である』(※4)と公言している。福沢は『人の能力には天賦遺伝の際限ありて、決して其(そ)の以上に上るべからず』と述べたうえで、人間の産育を家畜改良のようにせよ(※5)と提言しました。ほかにも切りがありません。結局、『悪』の側面は歴史のさまつな問題として扱われてきたのです」


・・・


※4 「一般はなお無制限の多産について自らは何の責任も感じていません。ことに下層階級のとうてい多くの子供を養育してゆくだけの力のないのが明らかであるにもかかわらず、…無知な、無教育な厄介者を社会に多く送り出して、いよいよ貧困と無知と、それにともなう多くの罪悪の種子とをあたりにまき散らしています。…アルコール中毒者であったり、癲癇(てんかん)病者であったり、癩(らい)病や黴(ばい)毒患者であったり、はなはだしきは精神病者でありながら、子孫をのこしています。…普通人としての生活をするだけの能力のないような子供を産むことは、人類に対し、社会に対し、大きな罪悪である」 (平塚らいてう「母性の主張について」『平塚らいてう著作集2』大月書店、P336~337)

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<おはよう出番です> 永井愛

2019年12月19日

 

<おはよう出番です> 永井愛

https://www.chunichi.co.jp/article/culture/CK2019121902000002.html

永井愛

写真

 女性解放を目指した平塚らいてうが中心となり、明治末期から大正初期に発刊された雑誌「青鞜(せいとう)」。その編集部をモチーフにした舞台「私たちは何も知らない」を書き下ろした。自らを縛る制度や慣習に立ち向かう、力強い女性たちの群像劇だ。来年1~2月、二兎社によって中部地方で上演される。

 女性による文芸誌として出発した青鞜は、伝統的な家父長制や良妻賢母を祭り上げる女性のあり方に疑問を投げかけた。

 貞操や堕胎、公娼(こうしょう)制度について激論が交わされ、女性の権利向上に一石を投じた。時にあけすけな体験がつづられ、プライベートな手紙が公開されたことも。「身をさらして問題提起する。彼女たちはマジだったんです。このパワーを今の私たちは果たして持っているだろうか」

 物語の着想は作家森まゆみの著書から得た。青鞜の編集部に焦点を当て、らいてうと同じく女性だけの雑誌を手掛けた森自身の体験を絡める構成に、青鞜の歩みが昔話ではなく、具体的な事実として腑(ふ)に落ちたという。

 今回の舞台では、言葉遣いも社会情勢も小道具も当時のものを再現するが、衣装だけは現代の普段着を用いる。「ちょっとした違和感の中から現在と青鞜がつながれば」との期待を込めた。

 らいてうの時代から百年以上がたった。女性は参政権を得て、働きに出る人も増えた。それでも「いまだに男女の賃金の格差はあるし、結婚したら男性の姓を名乗るのが当たり前」と違和感を口にする。

 インターネットの会員制交流サイト(SNS)などで、誰でも容易に情報発信できる世の中になりながら、「もの申す人を嫌う風潮がある。らいてうの時代の人の方が、よっぽど直接的にものを言っていた」と危ぶむ。

 自身が手掛けた近年の作品では、報道現場と政治の葛藤や忖度(そんたく)を描いた舞台「ザ・空気」が話題となった。「日本人は空気に弱い。けれどそれじゃいけないと思っている人もいる。抑圧が激しかった時代に、はっきりと発言していた女たちがいたことを忘れてはいけない」

 (小原健太)

 ながい・あい 1951年、東京都出身。2000年「兄帰る」で岸田国士戯曲賞。劇作家の傍ら、1981年に脚本家大石静と立ち上げた劇団「二兎社」を主宰。「私たちは何も知らない」の愛知公演は1月13日に豊橋市のプラット、2月1日に名古屋市のウインクあいちで。1月中に長野、三重、滋賀でも上演される。

プロフィール

檜原転石

Author:檜原転石
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