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ウィリアム・イングドール:意図せざる結果:トランプは中東を中国とロシアにわたしたのだろうか

マスコミに載らない海外記事

 

2020年1月18日 (土)

意図せざる結果:トランプは中東を中国とロシアにわたしたのだろうか

2020年1月14日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2020/01/post-fe5427.html

 イラク、そして中東じゅうでの、ここ数カ月の一連の行動により、ワシントンは、中国と、ある程度ロシアにも向かい、アメリカ合州国から離れる、戦略上の変更を強いた。もし出来事が現在の方向で続けば、それを阻止すべくワシントンがシリアでアサド不安定化を支持した主な原因である、計画されていたイラン-イラク-シリア・ガス・パイプラインが、ワシントンが完全な焦土作戦政治を始めないかぎり、今地域で実現する可能性がある。これは意図せざる結果とも呼べるものだ。

 自然が真空をひどく嫌うとすれば、地政学もそうだ。数カ月前、トランプ大統領が、アメリカ部隊をシリアと中東から引き上げる計画を発表した時、ロシアと、特に中国は静かに地域の重要な国々との接触を強化し始めた。

 イラクの石油開発や他のインフラ計画への中国関与は大きいが、際立ってイラク領土の約3分の1をISISが占領したことで大幅に混乱させられた。2019年9月、アンカラや、イスラエルや、サウジアラビアと共にワシントンが重要な隠れた役割を演じていた戦争、ISIS戦争よって破壊された主要インフラ・プロジェクト完成の代償をイラクが支払い、イラク石油収入の50%をアメリカ政府に与えるよう要求したが、丁寧な言い方をすれば法外な要求だ。

イラクの中国への方向転換

 イラクは拒否し。その代わりにイラクのアデル・アブドゥルマフディー首相は、イラク再建における中国の関与を議論するため、55人の代表団の長として北京を訪問した。この訪問はワシントンに気付かれずには済まなかった。その前にさえ、イラクと中国の絆は重要だった。中国はイラク第一の貿易相手国で、イラクはサウジアラビアとロシアについで、中国石油の三番目の供給源だった。2019年4月、バグダッドで、中国外交部羅照輝副部長が、中国は、イラク再建に貢献する用意ができていると述べた。

 アブドゥルマフディーにとって、北京訪問は大成功だった。彼はそれを両国関係の「飛躍的進歩」と呼んだ。訪問中に、8つの広範囲の覚書(MoU)と、与信契約の枠組みが署名され、中国の一帯一路構想(BRI)にイラクが加入する計画が発表された。イラク油田開発に加え、イラクのインフラ再建における中国の参加が含まれている。両国にとって、明らかに、中国が好んで言う「お互いに満足のいくもの」だ。

 アブドゥルマフディー首相の北京訪問のわずか数日後、野党勢力がアブドゥルマフディー辞任を要求するイラク政府の汚職と経済政策に対する全国的抗議行動が起きた。慎重に暴力的な反発を煽る狙撃兵が、CIAが2014年2月のキエフのマイダンで、あるいは2011年にカイロでしたのと同じように、政府制圧の印象を与えるよう、抗議行動参加者に発砲するのをロイターは目撃している。

 中国との交渉と、2019年10月のアブドゥルマフディー政府に対する自然発生的な抗議の時期がつながっているという有力な証拠がある。トランプ政権が、つながりだ。フェデリコ・ピエラッチーニの報告によれば「アブドゥルマフディーが議会で、アメリカがどのようにイラクを破壊し、今、石油収入の50%を約束しない限り、インフラと配電網プロジェクトの完成を拒否し、アブドゥルマフディーがそれを拒絶したという演説をした」。彼はアラビア語から翻訳されたアブドゥルマフディー演説の一部を引用している。「これが私が中国を訪問し、代わりに建設を行うよう、彼らと重要な協議に署名した理由だ。私の帰国後、トランプは私にこの協議を拒否するよう要求する電話してきた。私が拒否すると、彼は私の首相職を終わらせる巨大デモを解き放つと脅した。私に反対する巨大デモがその通り実現してから、再びトランプは電話してきて、もし私が要求に従わなければ、私に圧力をかけて従わせるため、高層ビル上の海兵隊狙撃兵が抗議行動参加者も警備員も標的に定めると脅した。私は再び拒否し、辞表を提出した。今日に至るまで、アメリカは我々が中国との取り引きを無効にすべきだと主張している。」

 今、伝えられるところによれば、彼がアブドゥルマフディー経由で、サウジアラビアとの調停活動で、バグダッドに着陸直後、イランのガーセム・ソレイマーニー少将のアメリカによる暗殺は、あり得る第三次世界大戦の話のさなか、地域全体を政治的混乱に陥らせた。イラク内の米軍基地に対する、イランのソフトな「報復」ミサイル攻撃と、テヘランを離陸したウクライナ民間定期便を誤って撃墜したというテヘランによる驚くべき自認は、トランプとロウハニがことを落ち着かせるため裏ルートの秘密会談をしていたという報告の中、何が本当に起きているかについて多くの人々を困惑させている。

 静かな「絹の」参入

 一つ明確なことがある。北京は、2003年の占領戦争以来ワシントンが保持していたイラク政治の支配に、ロシアとともに取って代わる可能性を見ている。OilPrice.comは、アブドゥルマフディーの成功した北京訪問直後の、10月始めに、二国間で合意した20年の「インフラのための石油」合意の一部として、イラクが中国に100,000バレル/日(BPD)の原油を輸出し始めたと報じている。イラク石油省の情報源によれば、中国は石油とガス投資から始めて、中国企業と人員と、イラク労働者を使って、工場や鉄道を含むインフラを作って、イラクで影響力を構築するだろう。中国が建設する工場は、中国の同様な工場と統合するために、同じ組み立てラインや構造を使うだろう。

 イランのエスハク・ジャハンギリ副大統領は、テヘランをトルクメニスタン、アフガニスタン国境近くの北東マシュハド市と結ぶ900キロの幹線鉄道を電化させるプロジェクトを実行するためイランは、中国との契約に署名したと発表した。ジャハンギリ副大統領は、テヘラン-コム-イスファハン高速列車路線を確立し、タブリーズを通って北西まで、これを拡張する計画があると付け加えた。OilPriceがこう指摘している。「石油やガスや石油化学製品に関係する主要地点の原点で、タブリーズ-アンカラ・ガス・パイプラインの起点であるタブリーズは(中国西部、新彊州の首都)烏魯木斉を、テヘランと、そして途上で、カザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタンとトルクメニスタンを結び、更にトルコ経由で、ヨーロッパへ向かう2,300キロの新シルクロードの要所となるだろう。この計画が大きく進展を遂げ次第、中国は輸送リンクを、西のイラクへと拡張するだろう。」

 さらに、イラク電力大臣ルアイ・アルハティーブによれば「長期的には、中国は戦略的パートナーとして我々の主要選択肢で、いくつかのインフラ計画資金供給のために、限定された量の石油に対する100億ドルの金融枠組みで始めたが、イラク石油生産の増大とともに中国の資金提供は増大する傾向がある」。つまり、中国が、より多くのイラク石油を採掘すればするほど、より多くのイラク・プロジェクトに資金供給が可能になるのだ。現在、イラクはガス・インフラが欠如しているため、発電用ガスをイランに依存している。中国はそれを変えると言っている

 さらに石油産業関係筋は、ロシアと中国が、イランがカタールと共有している巨大なペルシャ湾の南パース・ガス田から、イラン-イラク-シリア・ガス・パイプラインを再開する準備をしていると述べている。それ以前のカタールの代替ルート提案を拒絶して、イランとイラクとのパイプライン建設協定に署名した直後の2011年、シリアのバッシャール・アル・アサドに対し、アメリカが支援する代理戦争が始まった。トルコとサウジアラビアとカタールはアサドを倒す虚しい取り組みで、アルカイダのようなテロ集団や、後のISISに資金供給するため何十億もの秘密資金を注ぎこんだ。

 一貫性がなく、予想不可能なアメリカ外交政策が、これまでのアメリカ同盟者を遠ざけるにつれ、イラクでの、中東全体での取り組みにおいて、中国は唯一の国ではない。トルコのエルドアンとともにリビアで停戦を仲介したロシアは、イラクに先進的なS-400トリウンフ防空システムを売ろうと申し出たが、数週間前には到底考えられなかったことだ。バグダッドでのソレイマーニーのアメリカによる恥知らずな暗殺後、イラク国会議員は、アメリカとイランを含め、全ての外国部隊の撤退を要求する決議をしており、ワシントンからの反発にもかかわらず、この時点で、バグダッドが申し出を受け入れることは想像可能だ。ここ数カ月、サウジアラビア、カタール、アルジェリア、モロッコとエジプト全てが、世界で最も効果的なものだと言われているロシアの防空システムを買うため、ロシアと話し合っている。トルコは既にそれを購入した

 アメリカによるソレイマーニー暗殺前には、サウジアラビアや、UAEやイランやイラクで、アメリカが扇動したアラブの春以来、地域中で紛糾した高価な戦争の緊張を緩和するため、多数の裏ルートでの取り組みがあった。ロシアと中国は共に異なる方法で、地政学の緊張を変える上で重要な役割を演じている。現時点で、正直なパートナーとしてのワシントンに対する信頼性は、マイナスではないにせよ、事実上ゼロだ。

 ウクライナ定期航空便撃墜をイランが認めた後の一時的な静けさは、ワシントンが静かにすることを決して意味しない。トランプとエスパー国防長官はイラクのアメリカ軍撤退要求を反抗的に挑戦的に拒絶した。アメリカ大統領は、新たに起きたイランの反政府抗議行動に対する支持をTwitterにペルシャ語で投稿した。ワシントンが最近の中東における行動の意図しない結果に対処しようとする中、明らかに中東は実に酷い厄介な状況にある。

 F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師。プリンストン大学の政治学位を持つ石油と地政学のベストセラー作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/01/14/unintended-consequences-did-trump-just-give-the-middle-east-to-china-and-russia/

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戦争と破滅の淵へと出航する日本の自衛隊 ―アメリカのイラン挑発と自衛隊の中東派遣 千葉大学教授・栗田禎子

戦争と破滅の淵へと出航する日本の自衛隊 ―アメリカのイラン挑発と自衛隊の中東派遣 千葉大学教授・栗田禎子

暴挙の背景――トランプ政権のイラン敵視政策

 https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/15335

 米トランプ政権によるバグダードでのイラン司令官殺害事件(1月3日)は、世界を震撼させた。現時点(1月10日)では、米=イラン間の大規模な軍事衝突は当面は回避されたという見方が広がっているが、トランプ政権の暴挙により中東、さらには世界全体が戦争の瀬戸際に立たされたという事実は変わらない。また、同様の危機は今後も繰り返される可能性が強い。

 

 トランプ政権は発足以来、「強いアメリカ」の復権を掲げ、軍拡路線を追求すると共に、特に中東に関してはイランをことさらに敵視し、アメリカ(および中東におけるアメリカのエージェント的国家であるイスラエル)にとっての最大の脅威はイランだとして、「イランの脅威」を口実に中東に介入しようとする方針をとってきた。オバマ政権末期に成立し、イラン=欧米間の関係改善につながった「核合意」(2015年)から一方的に離脱する(2018年)ことで、イランを挑発し、緊張を意図的に高めようとする政策が着手された。2019年には原子力空母派遣や米軍増派によってイランへの軍事圧力が強化され、さらにはタンカー攻撃事件等を口実に、「航行の自由」を守るためとしてペルシア湾周辺での米主導の「有志連合」が活動を開始することになる。

 

 今回の事件は突発的ではなくトランプ政権のこのような対イラン政策の延長線上に生じたものであるが、何の法的根拠もなく他国の要人を一方的に殺害するという暴挙、明白な国際法違反であり、国際秩序を破壊しかねない行為として世界に衝撃を与えた。また、作戦の舞台となったイラクの主権を公然と踏みにじる行為(それは同国が米占領下にあることを改めて思い起こさせるのだが)である点も重要である。

 

自衛隊の中東派遣

 

 こうした状況下、日本の安倍政権は「航行の安全確保」のため中東(オマーン湾、アラビア海、バーブル・マンデブ海峡等)に自衛隊を派遣するという政策(2019年12月の「閣議決定」)を強行しようとしているが、アメリカのイラン挑発の結果、世界が戦争の淵を覗きこんでいるとも言える今、これはきわめて恐ろしい政策である。ある意味では、2015年にいわゆる「安保法案」(戦争法)が強行された時、国民の多くが危惧したことが、今まさに現実のものとなりつつあると言えるのである。安保法案は「集団的自衛」の名のもと、日本が直接攻撃されていなくてもアメリカの戦争に参加できる仕組みを法制化したものだが、2015年当時、「集団的自衛権」が発動される「存立危機事態」の唯一の具体例として政府答弁等で挙げられたのは、中東で危機が生じ、「ホルムズ海峡が封鎖された場合」だった。中東危機によって「シーレーン」の安全が脅かされ、石油供給に影響が及ぶ場合は、自衛隊を海外派兵することが許される、という論法で、アメリカの戦争に日本が協力することが正当化されたのだが、「航行の安全」を名目に米主導の「有志連合」を補完する形で中東に派兵するという今回の決定は、まさにこのシナリオをなぞるものとなっている。(政府は今回の派遣は安保法制ではなく防衛省設置法に基づくもので、任務内容も「調査・研究」だと主張しているのであるが。)

 

 自衛隊の中東派遣が基本的にアメリカの要請に基づくものであり、「有志連合」を補完する性格のものであることは誰の目にも明らか(自衛隊が米軍との「情報共有」を行なうことは明言されている)なので、今後アメリカの対イラン挑発が再開され、軍事的緊張が激化した場合には、自衛隊はアメリカによるイラン包囲網の一翼を担う勢力、米主導の中東侵略軍のまぎれもない一員として、中東の民衆の前に立ち現われることになるだろう。

 

崩壊しつつあるアメリカの中東支配

 

 政府がこのような危険な政策に固執し、アメリカに無批判に追随する姿勢をとり続けている背後には、過去30年近くにわたって日本の政策決定者たちが持ってきた思い込み――「冷戦」終結後の世界の勝者はアメリカであり、今後は経済・政治・軍事のすべてにわたってアメリカに従っていれば間違いない、という考え方――が存在する。1990年代以降、歴代の日本政府はこの固定観念に基づいて行動し、また特に中東に関しては、「冷戦」後、アメリカがさまざまな口実のもとに中東に仕掛けた一連の戦争(湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争)への支持・協力姿勢を示し、その過程で日本の国家・社会全体の軍事化を押し進めてきた。だが、日本政府によるこのような世界の捉え方は、現在、全く現実離れしたものになっている。

 

 「冷戦」終結後、たしかに一時はアメリカの「ひとり勝ち」、「一極支配」体制が生まれるかに見える段階もあったが、皮肉なことにその可能性はアメリカが中東に対して行なった一連の戦争の過程で失われていった。仮にアメリカが中東侵略に踏み出さず、別の何らかの形で「冷戦」後の世界に経済的・政治的ヘゲモニーを構築する道を模索していたら、アメリカは現実に唯一の超大国としての地位を築けたかもしれない。

 

空爆から逃げるイラクの民衆

 だが、「冷戦」終結に伴う国際政治構造の変化により何ものにも牽制されなくなったアメリカが、自国資本にとって経済的・軍事的に重要な地域には直接戦争を仕掛けるという帝国主義的な姿勢を露わにし、その過程で従来の国際法・国際秩序を露骨に踏み破る行為を繰り返した(2003年のイラク戦争は国連決議の裏づけもなく強行された)ことは、アメリカの道義的威信を傷つけ、国際社会におけるその地位を低下させた。戦争はアメリカの社会・国民をも疲弊させた。さらにあいつぐ侵略・占領の対象となった中東では、アメリカによる経済的・政治的・軍事的支配に対する民衆の批判が高まり、これが2011年の中東革命(いわゆる「アラブの春」。中東を内側から民主化すると同時に、それにより外部からの介入をはねのけ、先進資本主義諸国による支配からの自立性を回復することをめざした)にもつながっていく。

 

 アメリカが中東に対して繰り返してきた一連の戦争は、実はアメリカの国力を弱め、そのヘゲモニーを――世界全体においても中東においても――掘り崩してきたのであり、今後、「イラン戦争」という形でもう一度中東での戦争に踏み出すことがあれば、それはアメリカという国自体の(「大国」としての)凋落を決定的なものにするだろう。

 

 バグダードで実行された米軍による今回の殺害事件は、イラクという国が2003年以来アメリカの占領下にあり、事実上主権を奪われていることを改めて暴露する結果となり、イランだけでなく、イラクの民衆の怒りを引き起こすに至っている。アメリカのイラク占領という事実自体が批判の対象となり、2003年のイラク戦争とそれが中東全体の社会・政治に及ぼした破壊的影響とが、改めて問い直されるという状況が生じているのである。

 

困難な状況に置かれるイラクの民衆

 

 米軍の存在がイラクの主権を侵害していることは既に述べたとおりだが、それに加えて今回の事件は、イラクの今後の国内政治に深刻な影響を与える可能性があることを指摘しておきたい。

 

 2003年以降のイラクは米軍占領下に置かれると同時に、植民地主義的「分割統治」政策が導入され、結果として「スンナ派」対「シーア派」、「アラブ」対「クルド」といった宗派的・民族的対立をことさらに煽り、操作する政治構造が作り出された。このような構造の中で成立した現在のイラク政府は、「シーア派」主体の政権(それゆえ宗派的には「親イラン」と目される)であると同時に、実は米占領体制を容認し、これに従属している存在である。こうした状況に対し、イラクでは2019年10月から、政府の腐敗、生活苦や物価高に抗議する民衆の自発的デモが始まり、全土に拡大して、「10月革命」とも言われる様相を呈していた。2003年のイラク戦争後はじめての革命状況とも言われるこの運動は宗派別分断を越えたものであり(シーア派の市民も積極的に参加)、「スンナ派」「シーア派」に関わらず、腐敗した政府に対し一丸となって立ち上がり、民主化と社会的公正を実現していこうとしていたのである。

 

 しかし、米軍によるバグダードでのイラン司令官殺害、それに伴う米=イラン対立の激化、「戦争」勃発の可能性、という展開は、イラク国内における民主化運動を一瞬で吹きとばす効果を持つ。イラクを舞台とする米=イラン戦争が差し迫っているような状況は、政府が「非常事態」を口実に市民の運動を窒息させることをきわめて容易にするだろう。米=イラン対立の激化は、また、イラク国内に「親イラン」か「反イラン」か(あるいは「シーア派」か「スンナ派」か)といった対立の軸を再び持ち込むことになり、民主化運動の過程で形成され始めた民衆の「市民」としての一体感にくさびを打ち込んで、「宗派対立」を再燃させる効果を持つ危険性もある。(米占領体制下での「宗派主義」政策が生み出した鬼子と言える、いわゆる「イスラム国(IS)」のような存在が再度勢力を拡大する可能性もあるのである。)

 

 その意味で、今回の事件の最大の被害者は実はイラク国民であり、事態はイラク情勢の混迷・深刻化につながっていく可能性もあることに注意すべきである。

 

 トランプ政権による暴挙は、さまざまな意味で「パンドラの箱」を開けた。中東・日本・世界が戦争と破壊の淵に引きずり込まれることがないよう、全世界の市民による自覚的運動が求められる。

 

千葉大学教授 栗田禎子 (くりた・よしこ 歴史学/中東研究)

イランが撃墜認める、主張撤回 ウクライナ機「人的ミス」

イランが撃墜認める、主張撤回 ウクライナ機「人的ミス」

https://www.shinmai.co.jp/news/world/article.php?date=20200111&id=2020011101001399

 イラン・テヘランの空港離陸後に墜落したウクライナの旅客機の残骸=8日(ゲッティ=共同) イラン・テヘランの空港離陸後に墜落したウクライナの旅客機の残骸=8日(ゲッティ=共同)

 【テヘラン共同】国営イラン放送によると、イラン軍は11日、首都テヘランで8日に墜落したウクライナ機について、軍が誤って撃墜したと認める声明を発表した。同機の技術的なトラブルが原因だとしていた主張を撤回した。イラン軍は声明で、人的ミスで故意ではないと強調。イラン国民や犠牲者の遺族に謝罪の意を表明した。

 イラン当局が、国防に関わる主張を撤回し謝罪するのは極めて異例。客観的で明確な証拠が存在し、「事故」との主張を維持できないと判断したとみられる。

 声明によると、イランの防衛システムが同機を敵と誤認した。対米報復攻撃の数時間後で、軍は厳戒態勢を敷いていた。

(1月11日13時51分)

イラン「ミスで撃墜」 ウクライナ機 敵機と誤認

 【カイロ=奥田哲平】イランの首都テヘラン近郊で乗客乗員百七十六人が死亡したウクライナ旅客機の墜落を巡り、イランは十一日、「人為的ミス」により防空ミサイルシステムで撃墜したことを認め、謝罪した。当初は技術的問題による事故との見方を示していた。国営イラン放送が伝えた。

 声明によると、墜落機がイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」の基地に接近したため、敵国軍機と誤認して撃墜したという。イランは八日未明にイラク国内の駐留米軍をミサイル攻撃し、反撃に備えて警戒態勢を取っていたとみられる。

 ウクライナ航空のボーイング737機は八日午前六時すぎにイマーム・ホメイニ空港からキエフに向けて離陸し、直後に墜落した。米メディアは九日、米当局者の話としてイランのロシア製防空システム「トール(SA15)」から発射された地対空ミサイル二発が、旅客機を撃墜した可能性があると伝え、疑念が強まっていた。

(東京新聞)

もしイスラエルが、アメリカ軍艦を沈没させて、イランのせいにする何らかの偽旗事象で挑発して、ワシントンとイスラエルがイランを攻撃すれば、

マスコミに載らない海外記事

 

2020年1月 8日 (水)

プーチン決断の時期は迫っている

2020年1月4日
Paul Craig Roberts

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2020/01/post-af7ef2.html

 ウラジーミル・プーチンは世界の舞台上で最も立派な指導者だ。エリツィン時代の、ワシントンとイスラエルによって堕落させられたロシアで彼は生き残り、そこから現れて、世界的強国としてロシアを再建した。彼は南オセチアに、ウクライナに対する、アメリカ/イスラエル侵略に成功裏に対処し、クリミアの要請で、本来ロシアの州を母なるロシアに再併合した。ワシントンとその帝国からの果てしない侮辱と挑発に、彼は同種の方法で反撃せずに耐えた。彼は強い立場にある、融和的な和平調停者なのだ。

 彼は傲慢とウソに基づいたアメリカ帝国が、経済的、社会的、政治的、軍事的に失敗しているのを知っている。戦争が決してロシアの利益にならないことを理解している。

 偉大なイラン人指導者、世界史上、本当に稀有な指導者の一人、ガセム・ソレイマーニーのワシントンによる暗殺はトランプの指導力を陰らせ、プーチンに脚光を当てた。プーチンとロシアが世界の指導体制を引き受けるための舞台が整ったのだ。

 ワシントンによるソレイマーニー殺害は、セルビア人によるオーストリア大公暗殺が第一次世界大戦を引き起こしたのと同様に、第三次世界大戦を引き起こしかねない犯罪行為だ。プーチンと中国の支援を得たロシアしか、ワシントンが始動させたこの戦争を止めることができない。

 プーチンはワシントン/イスラエルによるシリア不安定化が、ロシアを狙っているのを理解した。警告なしでロシアは介入し、ワシントンから資金供与され武装した代理勢力を打倒し、シリアに安定を取り戻した。

 打倒されたワシントンとイスラエルは、シリアを迂回して、ロシアに対する攻撃を直接イランに向けると決めたのだ。イラン不安定化はワシントン、イスラエル両国に役立つ。イスラエルにとって、イラン崩壊は、二度イスラエル軍を破り、イスラエルの南レバノン占領を阻止したレバノン民兵ヒズボラに対する支援を停止する。ワシントンにとって、イラン崩壊は、CIAが支援するジハード戦士がロシア連邦内に不安定をもたらすのを可能にする。

 プーチンがアメリカとイスラエルの意志に従わない限り、彼はイランに対するワシントン/イスラエル攻撃を阻止する以外に、何の選択肢もない。

 プーチンが、そうするための最も容易で、最も美しい方法は、イランはロシア保護下にあると発表することだ。この保護は、おそらくインドやトルコも加盟国として、ロシアと中国とイラン間の相互防衛条約として正式のものにされるべきだ。無能な歴史家が、同盟は戦争の原因だとプーチンを説得したので、これはプーチンにとって実行困難だ。だがこのような同盟は戦争を妨げるだろう。正気でない犯罪人ネタニヤフや狂気のアメリカ・ネオコンさえ、完全に酔ったり、だまされたりしているときでさえ、イランやロシアや中国や、もしインドやトルコまで連合に加われば宣戦布告はするまい。戦争に参加するほど愚かなアメリカやイスラエルや、ヨーロッパのどの国にとっても死を意味するだろう。

 もしプーチンが結果的に、ロシアの利益ではなく、ワシントンの利益に仕える無能な歴史家の影響から自身を解放することができない場合、彼には他の選択肢がある。彼は、イランに、イラン人を訓練するロシア人担当者チームと最良のロシア防空システムを提供し、彼らの駐留で、ロシア軍に対する攻撃はロシアに対する攻撃だとワシントンとイスラエルに警告を与え、イランを落ち着かせることができる。

 これをした後、プーチンは調停を申し出るのでなく、主張することができる。それだけの力と影響力と調停する客観性を持った他者はいないから、これはプーチンの役割だ。

 プーチンの仕事は、イランを助けるというより、トランプを破滅させるはずの負ける戦争からトランプを救出することだ。プーチンは彼の言い値を設定できる。例えば、プーチンの言い値はINF/START条約、弾道弾迎撃ミサイル制限条約復活、ロシア国境からのNATO撤退があり得る。事実上、プーチンは何であれ欲するものを要求できる立場にある。

 イランのミサイルはイランの近くのどこでも、どんなアメリカ艦船でも沈没できる。中国のミサイルは中国近くのどこでも、どんなアメリカ艦隊でも沈没できる。ロシアのミサイルは世界のどこででも、アメリカ艦隊を沈没できる。皆、シーア派もスンニ派も、ISIS のようなワシントンの昔の代理人もアメリカ人が大嫌いな今、ワシントンが、中東に権力を投射する能力はゼロだ。国務省は、アメリカ人に中東から退去するよう命じなければならなかった。中東で、アメリカ人が安全ではない時、ワシントンが、どうして、そこで権力と見なされるだろう?

 もちろんワシントンは横柄で愚かなので、プーチンと中国とイランは、これを考慮に入れねばならない。愚かな政府は、自身のみならず他の国々にも荒廃をもたらせるのだ。

 だからプーチンには危険がある。だがプーチンが責任をとり損ねる危険もある。もしイスラエルが、アメリカ軍艦を沈没させて、イランのせいにする何らかの偽旗事象で挑発して、ワシントンとイスラエルがイランを攻撃すれば、結局、ロシアは戦争させられるのだ。主導権は、プーチンの手中にある方が良い。ロシアが仕切った方が、世界と地球の上の生命のために良い。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

 ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2020/01/04/putins-hour-is-at-hand/

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 映画『地獄の黙示録』をテレビで見た。「ワルキューレの騎行」を流しながらのヘリコプター攻撃で有名だ。宗主国狂気の侵略の典型。

 文中で、筆者が「もしイスラエルが、アメリカ軍艦を沈没させて、イランのせいにする何らかの偽旗事象で挑発して」と書いておられるが、彼は以前、その実例を詳しく書いておられる。さすがに野党も、戦艦派遣中止を言い出した。傀儡政権は、断固派遣し、このシナリオの可能性を推進するだろう。それが売国奴の仕事。

 寺島メソッド翻訳NEWSの下記翻訳が非常に詳しい。

「リバティ号事件(1967年)」再考

 下記翻訳記事も、是非お読み願いたい。

アメリカは、その歴史のうち93% - 1776年以来の、239年中、222年間が戦争

プーチンはイラン状況の主導権をイスラエルの手から奪うべきだ

マスコミに載らない海外記事


2020年1月 7日 (火)

プーチンはイラン状況の主導権をイスラエルの手から奪うべきだ

2020年1月6日
Paul Craig Roberts

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2020/01/post-68375a.html


 今アメリカとイラン間に戦争が起きるかどうかはイスラエル次第だ。イスラエルは、ヒズボラを隔離し、補給を途絶するため、イランとシリアを混乱に陥れる手段として、この戦争を大いに欲している。そこでイスラエルは南レバノン占領に成功できるのだ。

 混乱はアメリカ一極覇権主義に対する制約としてのロシアを排除する目的で、ロシア連邦内のイスラム教地域に十分な内部の混乱を輸出できるので、アメリカ・ネオコンはイランの混乱を必要としている。

 イスラエルとネオコンは彼らが必要とするトランプという駒を持っている。トランプの法外で無謀なガセム・ソレイマーニー殺人は、アメリカに対する重大なイランの脅威を引き起こし、トランプはそれに恫喝で答えた。トランプが彼の過ちを理解し、状態を静めようとしている多少の兆しはあるが、静められた状態をイスラエルとネオコンは欲していない。

 アメリカ国民の世論調査が、反イラン宣伝が成功していることを示している。良い立場にいるイスラエルやネオコンは、アメリカの何らかの機構、軍事基地、要員や艦船に対する偽旗攻撃を行い、それをイランのせいにするだけで良いのだ。アメリカ・マスコミはイランの血を要求するだろうし、トランプ支持者の大部分もそうするだろう。トランプは、既に反撃すると誓約したのだから、実行しなければなるまい。

 全ての戦争には、未知の思いがけない結果がある。プーチンの慎重さの結果、イランは集中爆撃を防ぐ十分な防衛システムが欠けている。ワシントンは自身の兵士でなく、ジハード戦士を送り込むだろうし、ジハード戦士起用はロシア内に混乱をもたらすだろう。

 もしイランがアメリカとの紛争で優勢に見えれば、トランプはイランに核攻撃を加えて、彼の苦境を切り抜けるだろう。実際、一部の右翼アメリカ人は、既にイランに核攻撃をするよう要求している。

 結果をあれこれ詮索するよりも、私は「なぜそんな危険をおかすのか?」問いたい。

 ロシアとイランと中国と参加しそうな他のいずれかの国との防衛連合は、イスラエルの手を縛り、戦争の発生を防ぐだろう。トランプ、ネタニエフのいずれもロシア、中国とイランとの戦争はしない。

 アメリカとイスラエルの侵略が衰えることなく続いている理由は、彼らに対する防衛同盟ができなかったためだ。

 イランに対する攻撃は、ロシアに対する攻撃なのだから、防衛同盟を構築するのは、攻撃を防ぐ方法、多分唯一の方法だ。同盟は、既に存在する暗黙の、事実上の同盟の、定式化だ。それはイランとロシアに対し、実際に脅威を減らす、危険な状況を安定させる最も確実な方法だ。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2020/01/06/putin-should-take-control-of-the-iranian-situation-out-of-israels-hands/

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